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変な男
日差しの入らない狭い部屋の中、清田正義は頭を机に擦り付け、安久代寛に懇願していた。エアコンでキンキンに冷えているはずだが、清田の熱意によって部屋の温度は上昇している。
「安久代さん、どうか私にチャンスをください」
「駄目だ」
「そんなこと言わずに」
「無理だ」
「なんで駄目なんですか?」
「はあ? お前なあ」
清田は安久代がこんなにも融通の効かない男だとは思っていなかった。
「安久代さんも私の立場になれば同じことを言うと思います」
「言うわけないだろう」
「ずいぶん冷たいんですね」
「これが普通だ」
「分かりましたよ」
「やっと納得したようだな。では正直に言ってもらおうか」
「私が盗みました」
「そうだろうな。防犯カメラにバッチリ映っていると言ったろ。でも、何であんなモノを盗んだんだ?」
「どうしても欲しくて…」
「いやいや、普通は欲しがるものじゃないぞ」
安久代は清田があれを盗んだ動機を知りたかった。一般的な話として、安久代はあれを盗む男の理由が全く見つからなかった。すると、清田は奇妙な話を始める。
「被ると落ち着くんです」
「落ち着く?」
「そうなんです。だから被るんです」
「おいおい、あれはどう見ても男モノだぞ?」
「はい、それが良いんです」
「お前にそんな趣味があるとはな…」
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