女神様だと?

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女神様だと?

突然目の眩むような光に照らされ、 意識が引き戻された。 ゆっくりと目を開けると、 目の前に誰かが座っている。 そして自分も座っている。 眩しい光が落ち着き、その誰かを凝視した。 新宿3丁目のおかまがコスプレしている。 としか見えない。 手には木で作ったような杖を持ち、 サンタクロースのような白い口髭を生やし、 ギリシャ神話の神様ような白い布を羽織っている。 だが残念なことに、 腕にも脛にも毛がびっしり生えていて 男から見ても気持ちが悪い。 なんのコスプレだ?神様? そういえば俺はいったいどうしたんだ? たしか‥ソープランドで綾香さんと、 俺は男に(童貞卒業)なれたのか? そんな疑問を感じていると、 「佐々木幸太郎君」 毛深いコスプレおじさんが話かけてきた。 「私は女神様だ。残念ながら君は死んでしまった。」 女神様?俺が死んだ? なに言ってんだこのオカマ野郎。 「女神様?俺が死んだ?どういうことですか?」 怒気を含んだ声で聴き返した。 「これを見なさい」 自称女神様は、自分のうしろを指さすと、 そこには映画のスクリーンのようなものが 垂れ下がっていた。 するとそのスクリーンには、 ソープランドで綾香さんの技術を堪能し、 いよいよ自分の息子のフルバーニアンが、 綾香さんの深淵に導かれる瞬間が写し出されていた。 そうだ俺はソープランドで綾香さんに導かれて、 男に(童貞をすてる)なるところだった。 でもその後、意識が遠くなるような感じがして・・・ そう思い出しスクリーンを見続けていると、 綾香さんがまさに自身の深淵に導こうとした瞬間、 俺の体が痙攣し、 口から泡を吐き出す様子が写し出された。 慌てた綾香さんが、 誰かを呼ぶような声をあげてから 懸命に俺に呼びかけ続け、 心臓マッサージと人工呼吸をしている。 そのうちに救急隊が到着して、 ソープランドから全裸の俺を運び出し、 救急車に乗せて行かれるところで、 その映像は終わった。 ショックで呆然としていると、 「これが君に起こった出来事だ。」 「君の悲願であった男になる(童貞を捨てる)という夢は、残念ながら、あと少しのところで叶わなかった。」 オカマ女神は、「ご臨終です」と告げる医者の ような口調で言った。 「そうだったんですか・・・」 混乱しているが、実際に映像を見せられ、 この世のものとは思えない 不思議な空間にいることで、 自分は男になる前に、 死んでしまったのだと思わざるをえない。 初キスは人工呼吸だったのか・・・ そんな俺の心を読んだのか、 「それも可哀そうだな・・・」 と憐みの声で、自称女神様はつぶやいた。 「佐々木幸太郎君。君はよく頑張った。」 スクリーンからオカマ女神に顔むけると、 真剣な眼差しで俺を見つめている。 正直少し気持ち悪い。 そんな俺の感情を無視するように話を続ける。 「だが特に君は徳を積むような行いはしていない。しかし頑張って男になろうとしている姿には 心打たれるものがあった。 だから君に男になるチャンスをあげようと思う。」 「えっ?チャンスですか?」 もう1度、綾香さんとプレイできるのか? 「違う。違う。そうじゃない。」 やはりこのオカマ女神は俺の心を読めるようで、 過去の名曲のフレーズのような言葉を口にした。 「幸太郎君。君は中学生の時に、ラノベを良く読んでいたね。」 確かにそうだ。ゲーム・漫画に熱中していた中学時代 ラノベをよく読み、そんな恋愛に心を震わせていた。 「ラノベの恋愛の定番シチュエーションといえば、君は何が思い浮かぶかね?」 オカマ女神様の質問に、 ラノベ読んでいた中学生の頃を思い出す。 「それは・・・恋愛ものだったら、幼馴染とか、義理の妹とかですかね?」 「そうだね。」 微笑みながら頷いたオカマ女神様が、 「後ろのスクリーンを見なさい!」と杖を向けた。
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