顔合わせ

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顔合わせ

なんだ・・・? 少し顔色が悪いうえに、 ゴリラとヤクザを足して2で割ったような奴は・・・ しかもやたらと俺に敵意がある気がする・・・ 斜め前に座っている父親になる男の視線が気になる。 チラッと正面に座る美少女に目を向ける。 この美少女は美少女で陰のオーラが漂っている気がする。 さっきから視線はテーブルに向けたままだ。 対象的なこの父娘を交互に見ながら、 うちの母親はいったいこのゴリラヤクザのどこが 気に入ったのか? この美少女はどうしてこんなに暗い雰囲気なのか? こんなに可愛いのにもったいない。 ひょっとして再婚には反対なのか? 思わず引き込まれるように見つめてしまう。 斜め前から今また、敵意のような視線を向けてくる 義理の父親になろうという男からの圧に負けないように、 なるべく和やかに過ごそうと俺は頑張っていた。 今日は待ちに待った顔合わせの日だった。 待ちに待ったというのは、 母親が近いうちにと言っていた、 顔合わせが、先方の事情により、 あれから1か月以上も経っていたからだ。 顔合わせの場のレストランの最寄りの駅で 待ち合わせをした。 待ち合わせの場所に到着すると、 すでに先方の親子は到着していて、 「銀二さんすいません。お待たせしちゃって。」 母親がその親子に声を掛けた。 俺はすぐに、その父親の横に立つ女の子に目を向けた。 『ヨッシャー!』 俺は心の中で雄たけびとガッツポーズをした。 一言でいえば美少女。 『ありがとう。オカマ女神。いや女神様。 少しでもあなたのことを疑ってごめんなさい。 あんな美少女の義妹を用意してくださり、 本当にありがとうございます。 俺、この世界で頑張ります(男になります)』 俺は心の中で手を合わせて、オカマ女神に感謝した。 が、すぐにその美少女の横に立つ、 銀二という昭和のヤクザみたいな名前の男が、 俺に対して敵意のような目を向けてくることに 気が付いた。 おいおいおい! これからあなたの息子に俺はなるんだぞ、 なんでそんなに睨みつけてくるんだ? この短時間の間に、何か気に障るようなことしたか? 疑問を感じながらも、 俺の態度でこの話が破談になってしまったら、 この美少女との生活がおじゃんになってしまう。 ここは緊張している雰囲気を出しながら、 控えに目にいこうと、 軽く親子に向かってお辞儀をした。 そして今、顔合わせの会食のテーブルについても、 相変わらず父親は敵意を向けてくるし、 娘は自己紹介以外口を開こうとしない。 時折、父親やうちの母親が話かけるが、 相槌を打つだけだ。 コミュ症?だから訳ありとあったのか? オカマ女神に見せられた、 訳あり義妹のパネルを思い出していると、 「銀二さん、もう中国に行く準備はできたのですか?あまり顔色も良くないし、仕事とはいえ大変ですよね?」 「えっ中国?」 突然の母の言葉に思わず聞き返すと、 「まだ幸太郎には話してなかったわね。銀二さん、仕事の都合で急に中国に行くことになっちゃって・・・寂しいけど、お仕事だからねぇ・・・」 「だからいろいろどうするか考えなくちゃいけなくて、顔合わせの場が今日まで延びちゃったの・・・」 「そうだったんだ。」 だからいつまで経っても顔合わせがなかったのか、 ということは、この銀二という奴とは、 一緒に住まなくてもいいんだな。 「円香さんはやっぱり銀二さんと一緒に行かないの?」 「はい。進学も考えていますし。かといって私が一人暮らしするのも父も不安でしょうし、ですのでご迷惑でなければ私だけですが、一緒に暮らして頂ければと思ってます。」 「迷惑だなんてとんでもない!円香さんはもう家族なんだから、一緒に暮らすのは当り前よ。 私と幸太郎と円香ちゃんの3人で、仲良く暮らしましょ。」 なんだちゃんと話せるじゃん。 まともに話をした義妹になる円香ちゃんの声と、 少し寂し気な母親の声が気になりながらも、 ヨッシャ!これで邪魔者(銀二という義理の父) だけがいなくなる! さすがに義理の父親の前で、 イチャイチャはできない、いやするけど、 やりにくいだけ。(既に付き合うことが前提) 『これは神回人生突入~~!』 と心の中で俺は万歳三唱していた。 きっとこの喜びが顔に出ていたのだろう、 目の前の義理の父親が、 睨んでいたことに気がつかなかった。
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