ソープランド♪ソープランド♪ヤッホー!ヤッホー!

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ソープランド♪ソープランド♪ヤッホー!ヤッホー!

今日これから俺は男(童貞を捨てる)になる。 ゴールデンウィークの真っただ中、 とある町を決意を込めて歩いている。 電車で入谷駅から歩いて向かう先は、 高級ソープランドのある吉原。 緊張しているのか、(ドキ・ドキ)と やけに心臓の音が大きく聞こえる。 俺の名前は佐々木幸太郎(ささきこうたろう)22歳。 今年大学を無事卒業して、社会人になった。 中学生の時は特に恋愛に興味がなく、 ゲーム・アニメ・ラノベに 夢中になって過ごしていた。 高校は男子校だったので、友人や同級生に 彼女がいた奴はいたが、自分には関係のない どこか遠い世界の話のように思っていた。 転機が訪れたのは、 大学に進学し入ったゼミで出会った、 同級生の河合日葵(かわいひまり) ちゃんだった。 彼女は誰が見ても可愛く、しかもおっぱいも大きい、 いわゆる陽キャというやつで、 男女ともに人気があり、 男子は狙っていた奴も多くいた。 自分には高嶺の花だと思っていたが、 ゼミの飲み会や 課題など手伝ってあげているうちに、 いつのまにか日葵ちゃんのことを好きになっていた。 ゼミの課題が出るたびに、 僕のところにくる日葵ちゃんに、 彼女も僕のことが好きなんだ、 と勝手に思い込んでしまっていた。 いつか日葵ちゃんが、 僕に愛の告白をしてくることを 妄想していたが、そのいつかは訪れることなく、 いたずらに時間だけが過ぎていった。 我慢できなくなった僕は、 思い切って日葵ちゃんに告白した。 『ゼミの課題のことでちょっと』と、呼び出した。 僕の告白に対する、彼女の答えはこうだった。 即答で、 「ごめん!私、彼氏がいるから幸太郎君とは付き合えない。幸太郎君とは、あくまでゼミの友達としてしか思ってないから。これからも友達として仲良くしてね。」 笑顔で迷いのないの返答だった。 振られたのに告白した後も、 変わらず接してくる日葵ちゃんに 最初は戸惑っていたが、 またチャンスがあるかもしれないと、 今思えばお花畑のような脳内を、 奈落に突き落とすような出来事が起こった。 その日はいつもより早く講義が終わったので、 ゼミの教室に向かうと、 「日葵、前に佐々木から告白されたことあったじゃ~ん。」 その声に足を止めた。 「あ~あれ?気持ち悪かったよ、ゼミの課題ためだけに話したくもないアイツに近寄ったんだけどさ、勘違いしやがって、自分の姿、鏡で見てから言えよ~」 日葵ちゃんの悪意の満ちた声にショックを受ける。 「ホントそうだよね~、佐々木の奴、 日葵と自分が釣りあうってよく思えるよね~」 バカにするようなその声から逃げるように 僕は足早にその場を立ち去り、 その日はゼミを休んだ。 自宅に帰り改めて自分のことを鏡で見てみる。 目まで覆っている長いボサッとした髪、 度の入った厚いメガネに少し太めの体系。 ダサい洋服。 言われて気が付くなんて、自分でも恥ずかしい。 「自分の姿、鏡で見てから言えよ~」 あのバカにした声が甦ってくる。 そして僕は生まれ変わることを決意した。 髪を短くし、メガネからコンタクトに変え、 ジムにも通った。 フアッション誌も購入し勉強し、 新聞配達のアルバイトで貯めたお金で 自分の息子もバージョンアップさせた。 これでもう外見と息子は、 どこに出しても恥ずかしくない 立派な花婿になったはずだ。 卒業間近には、自分の変化に日葵ちゃんも、 「佐々木君カッコよくなったよね」などと言われたが、 俺を利用するだけ利用した、この性悪女に興味はない。 俺は社会人デビューを飾るんだ! 就職先は一生懸命活動して、 女性の多い会社に就職した。 入社後一か月間の研修期間を経て、 ゴールデンウイーク後には 若い女性のいる部署に配属される。 そこでウキウキライフを送るためにも、 俺に足りないのは実践(女性経験)のみ。 プロで大丈夫なら、素人は問題ないはずだ。 親父・お袋ゴメン。 初任給というものは本来、 親に感謝を伝えるために使うものだが、 俺が男になるためにソープランドに使わせてください。 来月お給料でプレゼントを買います。 これが俺がゴールデンウイーク中に、 吉原に向かって歩いている理由である。
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