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告白
「好きです」
裏庭に呼び出されて告白された。
相手はクラスメイトの旭圭太くんだった。
彼とは、あまり話したことがない。
着崩した制服に、耳にあいた数個のピアス。
明るく染められた髪色。
クラスでも浮いた噂が流れる有名人だ。
きっとからかわれているのだろう。
「…もしかして罰ゲームとかだったりする?ごめんね、僕はこういうの苦手で…」
そう言うと、彼は突然顔を上げた。
その顔は真っ赤に染められていたが、眉がだんだん下がっていき、目からは涙が零れだした。
「えっ、大丈夫?」
普段の飄々とした雰囲気とは打って変わっての様子に驚いてしまう。
「ちがう、罰ゲームなんかじゃない」
涙を拭って僕の肩を掴んだ。
「本気で好きなんだ」
その表情は見たことがないほど真剣だった。
今までこんなにも真っ直ぐに好意を受けたことがなかったから身体が固まってしまう。
どうやら彼は本当に僕のことが好きなのだろう。
「でも…僕たちは男同士だし、今までそんなに関わりがなかったでしょ?どうして好きになってくれたの?」
彼が今まで付き合ってきたのは女の子のはずだ。その価値観が変わるほどのことを僕がしたとは思えなかった。
旭くんは少し落ち着きを取り戻して僕の肩から手を離すと、近くの石段に座った。
僕も同じように座る。
「俺さ、これまで何にも考えずに生きてきて、色んな女子とも付き合ったし、そういう行為もしたけど、それが幸せとか嬉しいとかの感情にならなくて…自分っておかしいのかなって思ってたんだよね」
旭くんは空を見上げながら語り出した。
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