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帰りのホームルームが終わって圭太くんのところへ向かう。
圭太くんは席にいなかった。
このまま待っていよう…と思って顔を上げると、その後ろの席の藤堂くんと目が合う。
相変わらず強い眼光だ。黒い目の奥に引き込まれそうになる錯覚。
ちょっと怖いなぁ。
「あ…藤堂くん、圭太くんってどこに行ったかわかる?」
なんだか気まずい空気になる気がして話しかけるが、藤堂くんの表情は険しいままだ。
「…なんで?」
「えっと…このあと一緒に勉強するって約束してて」
「へぇ、聞いてなかった。あいつもう少しで帰ってくると思う」
「そっか、ありがとう」
軽く会釈して会話が終わる。
もう教室にいた生徒はいなくなっていて、とても静かだ。
藤堂くんは帰らないのだろうか。
もしかしていつも圭太くんと一緒に帰っているのかな。朝も一緒に来ていたし。
「藤堂くんはまだ帰らないの?」
沈黙が気まずくて聞いてしまった。
「あいつのこと待ってたけど、学校残るみたいだし、あいつ戻ってきたら帰るわ」
「そうなんだね。二人って仲良いよね、幼馴染なんでしょ?」
「そうだけど。なんでそんなこと聞いてくんの?」
なんだろう。彼の口調からはやっぱり敵意のようなものを感じる。
過去に僕なにかしちゃったのかな…。
「ええっと…」
「つかお前最近圭太と仲良いよな?なんで?」
「なんでって…別にそんな」
告白されて友達になったなんて言えないしなぁ。
藤堂くんは圭太くんが告白したこと知ってるのかな。
「お前ら付き合ってんの?」
「えっ、付き合うって…僕たち男同士だよ。圭太くんとは友達、だから…」
勝手に色々話すのも違うし、とりあえず友達になったってことだけ話しておこう。
「そうか。じゃお前は男相手に恋愛する気はないってことだな」
なんでこんな話を藤堂くんとしてるのだろう…。
なんて答えるのが正解…?
「…僕は恋愛とかしたことないから正直よくわかんなくて、、、その…藤堂くんって、僕たちのことなにか聞いてたりする?」
「あいつ、お前のこと好きなんだろ」
「あっ…知ってたんだ」
「俺にしか言ってないと思うけどな。あいつは本気でお前のことが好きなんだってよ」
疑ってたわけじゃないけど、藤堂くんが言うってことは本当に僕のこと好きになってくれてるんだな。
「…で、俺はあいつのことが好きだ」
え…今なんて言った…?
あいつって圭太くんのことだよね。
「…それって恋愛感情でってことだよね…?」
「あぁ」
知らなかった…。
だから藤堂くんは僕に対して敵意があったのか。
「あいつには好きってこと言ってないし、邪魔したいとも思ってねぇけど、、、変に振り回すのはやめろ。好きになるつもりもねぇのに遊ぶだけ遊ぶのはあいつが可哀想だ」
「それは…」
僕は真剣に好きになれないか考えていたつもりだったけど、藤堂くんからしたらそう思われても仕方ないよね…。
僕も藤堂くんの立場だったら、僕のこと嫌いになるし。
胸の奥が痛い。
人から嫌われるってこんなに辛いんだ。
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