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ガラッと教室の扉が開いた。
「ごめん、先生に呼ばれててめっちゃ待たせた…。って、あれ?蓮いるじゃん。言ってなかったっけ、今日ここで勉強するから先帰ってていいよ」
「……」
「…え、なに。二人ともどしたの?」
「「……」」
どうしよう、この空気。
「別に。俺帰るわ、じゃあな」
藤堂くんが何事もなかったかのように教室から出て行った。
「ほんとごめんね。俺から約束したのにこんなに待たせちゃって…」
「いや全然大丈夫だよ」
「つかさっきあいつとなんかあった?」
「え…?…いや、なんもないよ」
「そう?まぁあいつちょっと最初怖いかもだけど良い奴だからさ、仲良くしてやって」
仲良く…はもう無理かもしれない。
圭太くんは本当に藤堂くんの気持ちに気づいてないんだな。
幼馴染らしいけど、昔から好きだったのかな。
昔からずっと…。
それってきっとすごく辛いはずだ。
「彼方?大丈夫?」
「う、うん…大丈夫だよ。勉強始めよっか」
家に帰ってからもずっと藤堂くんのことが頭から離れなかった。
曖昧な気持ちで圭太くんと付き合ったりして藤堂くんを傷つけるのは嫌だし、でもここまで仲良くなってくれた圭太くんを拒絶するのは違う気がするし…
僕はどうしたら…
「なんかあったん?」
陽太が部屋に入ってきた。
僕はベッドの上でぐったりしながらそちらを見る。
「うーん…」
「えっ、もしかして彼となんか進展あった?」
わくわくしたような面持ちで聞いてくる陽太。そんな話じゃないよ…。
「実は…」
陽太にこれまであったことを話した。
これまでの自分の経験がなさすぎて、僕にはもうどうしたらいいかわからない。
「…ってことなんだけど、僕はどうしたらいいと思う?」
「幼馴染かー、当て馬参戦って感じだねー」
「ちょっとそんな言い方…」
「まぁでもそんなに気にしなくていいんじゃない?」
「でも藤堂くんも本気で圭太くんが好きなんだよ」
「圭太って奴も本気で彼方が好きじゃん。そんなん考えたってどうしようもないでしょ」
「それは…そうだけど」
でも僕は藤堂くんにあんな顔をしてほしくはない。
「んー…藤堂にそんな負い目があるならもう圭太を振れば?」
そんな簡単に言うけど…
「…できればどっちにも傷ついてほしくない」
「それら無理だって。誰かしら傷つく人はいるし、恋愛なんてそんなもんなんだから深く考えたら彼方が病むよ?」
「うーん…」
「彼方はちょっと優しすぎるんだよ。人の気持ちばっか考えてたらきりないし、一回自分の気持ち整理して区切りつけてみたらどう?」
「そう…だね、そうだよねぇ…」
僕がぐずぐずしてたら何も進まない。
それはわかってるんだけどね。
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