長い初恋

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翌日の朝。 とびきり朝に弱い俺は毎日圭太と待ち合わせて行けるように、二時間前から20分おきに目覚ましをかけている。 あいつ起きるの早いんだよな。 最近は自分で弁当作ってるとか言ってたし。 待ち合わせの時間も早まったから俺にとっては結構大変だ…。 でも毎日登下校だけは圭太と二人っきりになれるから、圭太に合わせて起きるしかない。 基本的に俺は圭太に合わせるしか一緒にいられない。今までも意見が食い違ったりしたら簡単に離れていこうとしてたしな。 制服着て朝飯食べて、圭太が似合うって言ってくれた髪型にして、圭太が好きって言ってた香水つけて、圭太から貰ったキーホルダー何個もつけたスクールバッグ持って家を出る。 俺の生活はこんな感じでずっと圭太づくしだ。あいつほんと、なんで気づかねぇんだろうな。 でも、なんでもない日常も好きな奴のことを考えながらだと楽しくなるよな。 待ち合わせまで2分前。 いつも少し早めに出て、圭太の家の玄関前で出てくるのを待つ。 早く出てこねぇかな。 待ち合わせから10分経過。 遅ぇ。 あいつ何してんだ。 「お邪魔します」 旭家の玄関を開けて中に入ると、圭太の母さんがいた。 「おはよう、蓮ちゃん。圭太いまお弁当作ってるんだけど、ごめんねぇ、今日寝坊したみたいで」 「おはようございます。いえ、全然大丈夫です」 リビングに上がらせてもらうと、忙しなく動いてる圭太。 まだ制服も着てねぇし、寝癖もついてる。 「おはよ、圭太」 「おう、蓮、はよ。ごめん、今日先行ってて」 俺のことなんて見向きもせずに卵焼きを作るのに夢中だ。 「なんか手伝うか?」 「いいって。学校遅れるよ、俺のことはいーから先行って」 「圭太も遅れるだろ、ここで待つよ。 つか、購買でなんか買えばよくねぇ?」 「よくない。これ彼方の弁当でもあんの」 「……はぁ?」 いつもより綺麗に並べられたおかず、米と汁物も用意してるし…。 最近早起きしてるのも弁当自分で作ってるのも全部杉浦のためか。 「杉浦に作る必要なくねぇか?」 つい言ってしまった。 圭太はそれを聞いて今日初めて顔を上げて俺の方を見た。 目が合ってどきっとする。 「必要ありまくりだよ。好きって気持ちをしっかり伝えたいからな!」 めちゃくちゃ良い笑顔で言われた。 俺のドキドキを返してほしい…。 ほんと杉浦杉浦ばっかだなこいつ。 「そんなに杉浦が好きかよ」 「もちろん、大好きだ!」 『大好き』って言葉にまた無駄に落ち着かなくなる。俺に向けられたわけじゃねぇのに…。 「…そうかよ」 「うん、もう少しかかると思うから先行ってて」 「いや待ってる」 「え、遅刻するかもよ」 「どんだけ凝ったもの作んだよ」 「絶対美味しいって言って欲しいんだもん!」 「そうか。でも待ってる、遅刻してもいい。一緒に登校したい」 「お前、ほんと俺好きよな」 お前は悪気なくこういうこと言うよな。 当たってるよ。 「あぁ、好きだ」 「あはは!ありがとー」 笑ってんなよ、馬鹿。
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