告白

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彼方は一見大人しくて、でも全然浮いてるわけでもなくて、誰が相手でも適度に合わせて会話しているように見えた。 最初は俺と似たような感じの人なんかなって、勝手に同族嫌悪したりもしたけど、本当は全然違った。 掃除当番が回ってきて、運悪く何人か欠員が出たから俺と彼方二人での教室掃除となってしまった。 机を持って運ぼうとする彼方。 「掃除めんどくない?やったってことにして終わらせよ」 俺はそんな提案をした。 いない奴も多いし、二人だけだと疲れるし。 それにどうせやったってやらなくたって見た目大して変わんないからこんなの。 「そうだね。旭くん、もし用事あったりしたら、全然大丈夫だよ。僕も適当に終わらすからさ」 人の良さそうな笑顔でそんなことを言われた。 「めっちゃ優しー。ありがと、じゃよろしくな」 俺はそのまま教室を出た。 なんだあいつ。 良い子ちゃんアピールかよ。 スマホをいじりながら生徒玄関へと向かう。 校舎内は比較的静かで人もあまり通らない。夏が近いのに廊下は少し冷えてて寒かった。 何だか後ろ髪引かれる思いのまま靴を履き替えて外に出る。 この後暇だし誰か誘うかなーと思いながらスマホをいじる。 玄関をくぐり抜けて少し進んだところでふと振り返ってみるとちょうど俺のクラスの窓が目に入った。 適当にやるっつってたのにクソ真面目に掃除してんじゃん、あいつ。 馬鹿じゃねと思いながらまた歩を進めようとしたが、どうにもイライラする。 このままサボって何か言われても嫌だし…。 逆にあいつの株を上げておいてもいいじゃん…? なんて適当な理由をつけて、俺は廊下を走って戻っていた。 荒い呼吸を整えながら教室の扉を開けると、彼方が驚いたようにビクッと肩を揺らしてこっちを見た。 幽霊見たみたいな顔してんなよ。 「旭くん…?どしたの、忘れ物したの?」 ホウキを両手に持ったまま首を傾げる彼方。 「いや…その、さすがに手伝うわ。さっきはごめん」 息を落ち着かせながら、頭の中グルグルしたままホウキを取り上げて掃く。 なんでこんな格好悪い感じになってんだ。 ごめんの意味もよくわかんねぇだろうし。 こいつのホウキ奪ってなにしてんだ俺。 混乱したまま居心地が悪くて彼方に背を向けて床を掃く。
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