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クスッと笑い声が聞こえた気がした。
彼方の声だ。
「なに、笑ってんの」
俺はこの時たぶん拗ねたような顔をしてたんだろう。
彼方はより一層可笑しそうに笑った。
その笑顔が夕日に照らされて、なんか綺麗で見惚れてしまう。
「えっと…ごめんね、笑っちゃって。ふふ…まさか戻ってくるとは思わなかったからさ」
「べっつに…途中で気が変わったんですー」
「うん、あはは…旭くんって優しいねぇ」
眩しい笑顔でそんなことを言われた。
俺が優しいって。
こいつ何言ってんだよほんと。
何もわかってないし。
「あと、旭くん」
「何だよ」
振り向くと思いの外近くにいてその距離感にビビる。
彼方は俺の足元を指差してる。
「これって外靴のままじゃない?」
またコテンと首を傾げた。
って…
「あっ!まじじゃん…そのまま上がってきたのか」
馬鹿は俺だ、何してんのまじで。
顔の温度が上がるのを感じて恥ずかしくなる。
普段こんなことしねぇのに。
「かっこわりぃ…」
つい口に出てしまった。
はっとして彼方を見ると不思議そうな顔をしている。
「旭くん格好いいよ?」
その首傾げるの癖かよやめろ。
可愛いとか思ってないから。
「うるさい…」
「ふふっ。
でもありがとう、戻って来てくれて。
一人だと結構大変で助かったよ」
「元はサボろうとしてたし…お礼言われることじゃ…」
「えっ、サボろうとしてたの?」
目をまんまるにして言われた。
気づいてなかったのかこいつ。
「いや、ちが…ええっと、予定がなくなったから、サボろうとしたけど戻ってきたってことよ」
焦って変な嘘ついてしまった。
彼方と一緒にいるといつもの自分じゃないみたいだ。
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