第3話 初めの一歩

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 従来の「アイドル」は、産業としては憂き目に逢っていた。「アイドル」の寿命は非常に短いからだ。  「アイドル」に対する需要に対して、供給がこれを上回る、飽和状態になりつつあり、これも、低迷傾向に拍車をかけていた。  「アイドル」としてデビューさせたとしても、最初は下積みからスタートすることになる。それが何年続くかもわからない。なので、  容姿が優れていれば、モデルに。  歌唱力が優れていれば、シンガーに。  運動神経が優れていれば、ダンサーやパフォーマーに。  演技力が優れていれば、俳優業に。  話術が優れていれば、バラエティータレントとして、売り出す方が効率がいいと、事務所は考えるようになった。  そんな中で「アイドル×シェフ」というジャンルが話題になっている。これは「料理のできるアイドル」を意味する言葉だ。  厳密に言えば、「料理」を媒介にして、自分の魅力を世間に伝えることができる存在というべきか。  プロの料理人とまでいかなくとも、これに近しい技量をもつことが求められるのだ。
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