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「アイドル×シェフ」になるためには、「アイドル×シェフ協会」の定める規則及び手続に沿って、登録を行うことが求められる。
「これから、アイドル×シェフ協会支部に行って、登録手続きをするわよ」
と、夕美は言った。
「はーい!」
蜜姫は素直に返事をした。
事務所を出て、電車を乗り継ぎ、2人は協会支部のある建物へと向かった。
アイドルシェフ協会の建物は、ごくふつうの建物だった。二人は建物に入り、受付の前に来た。
「この書類に、アイドルシェフ委員会の規定に沿った個人情報を記入してくださいね」
担当の職員から一枚の用紙を渡された。
「ええと、名前……三ノ宮蜜姫。住所……。生年月日……。身長……157cm、体重……50kg。スリーサイズは……」
蜜姫のボールペンを握る手が止まった。
「あの……」
蜜姫は尋ねた。
「これ、書かなきゃダメですか?」
「決まりなので」
その職員は答えた。
化粧を施した端正な作りだが、機械的な受け答えに無機質な能面を彷彿させた。
「でも……」
蜜姫の顔が少しだけ曇る。
「スリーサイズは……その……」と言いかけたところで、夕美が職員に言った。
「あの、ひとつよろしいでしょうか?」
これは、助け船かな?蜜姫は、少し期待した。
「三ノ宮蜜姫は、貧乳なんです!」
ん?
「ぺったんこなんです!」
んん?
「ないものをどうやって、書けというのですか!!!」
んんん?
職員が書類を覗き込み、蜜姫の胸を見る。
「確かに……ないですね」とだけ言った。
「でしょ?」
夕美も同調した。
「あの……」
蜜姫が恐る恐る手を挙げた。
「スリーサイズの記入は結構です」
その職員が折れた。
夕美が蜜姫をみやり、サムズアップをした。
いかにも、敏腕マネージャーみたいなノリだけど、「解せぬ」と蜜姫は呟いたという。
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