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パパはすっきりした顔でお風呂から戻ってきた。緩くパーマがかかった髪はまだ濡れていて、おでこを隠して少し幼く見える。上半身の筋肉は引き締まってムダがない。首にタオルをかけて、下はスウェット一枚でも何かサマになってしまうのは、身内びいきではないと思う。
黙ってればパパはイケメンだ。私との年齢差は二十二ある。
「年頃の娘の前で上半身裸って、どうなの」
「やだ。奈那のえっち」
「私には瞬くんがいるんだからね。アラフォーに欲情なんかしません」
「彼氏とヤラシイこととかしてないだろうな」
「デキ婚した人に言われたくないよーだ」
「俺たちは心から愛し合っていた。おまえを授かるのは時間の問題だったんだ」
「はいはい、知ってる。何度も聞いた」
ため息をついて、私は自分の朝ごはんを食べ始めた。
「あー、ずるいー」
「遅刻しちゃう」
「コレあっためてよー。奈那」
「自分でしなさいよ、そのくらい」
世の中のお母さんって いつもこんな心境なのかな
「あ。奈那、誕生日おめでとう」
「ありがと」
「俺もなるべく早く帰るから、今日はよろしく」
「瞬くんとごはん食べに行きたかったなぁ」
初カレといい雰囲気で過ごしたかったのに、今年に限ってパパは何か特別なイベントを企画したみたい。『家族の大切な話があるから家にいて』って真顔で言われたら、断れなかった。
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