Daddy

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ホストの仕事はお客さんをもてなすこと。 まだ小さな私に、パパは真剣に教えてくれた。相手の話を聞いて、美味しいお酒や食事を楽しんでもらう。大きくなるに連れて周りの反応から、この仕事が一般的にはあまりよく思われない職種であることがわかってくる。それでもパパはそのことも隠さなかった。 『慰める方法にはえっちなのもあるし、相手が欲しがったらあげてしまう人もいる。物で欲を満たす人もいるよ。だけど、それはほんのつかの間の快楽だ。寂しい時は誰だってそばにいて欲しいのに、その弱みにつけ込んでる気がするんだ。俺は話を聞くことでその人を笑顔にしてあげたい』 そう言って笑ったあの時、確かに私にはパパがとてもカッコよく見えた。 「ごめんね。もっと一緒にいたかったな」 「日曜日、ごはん食べに行こうよ」 「うん。楽しみにしてる」 二人ともなかなか離れられなくて、手を繋ぎながらうちのマンションまで送ってもらった。エントランスから少し離れた木の陰で、瞬くんが小さな箱を渡してきた。 「これ、プレゼント」 「わあ! 開けてもいい?」 指先が震えてリボンを上手く解けない。やっと蓋を取ると、小さなピアスが並んでいた。 「可愛い」 「気に入った?」 「うん! ありがとう。今度会う時にしていくね」 瞬くんもいつになく照れくさそうに笑って、私の髪をくしゃくしゃと撫でた。その手が私の頬に伸びてくる。 「瞬…」 彼の温かい唇が私に重ねられ、ついばむように優しく触れた。胸の中をドキドキが駆け抜けていく。小箱をぎゅっと握りしめて、気がつくと私は彼の腕の中にいた。 「奈那、大好きだよ。誕生日おめでとう」 「うん。ありがとう…」 私はそろそろと彼の背中に手を回した。彼の匂いと温もりに、幸せすぎて泣きそうだった。 家に戻るとパパはまだ帰ってきていなかった。さっきのキスの余韻に浸っていると、自然に顔がにやけてくる。こんなの見られたらパパに突っ込まれちゃう。落ち着かなきゃ。 昨日から仕込んでおいたパエリアの材料を取り出して、私はエプロンを着けた。ケーキはパパが買ってきてくれるはず。キッチンにオリーブオイルの匂いが立ち込めて、私はハミングしながら夕ごはんを作り始めた。
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