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「はーい、奈那。十六歳おめでとう」
ドアを開けると花束と共にハグされて、優しい香水に包まれる。腕の温かさにほっとした。
「ありがとう。パエリア味見する?」
「少し貰おうかな」
夜中に二人で遅い夕食をつつきながら、私はパパへの不満をぶちまけた。
「相変わらずだねえ」
おばあちゃんも呆れ顔になった。
「紗良が甘やかし過ぎたのよ。いくら幼なじみだって、そこまで面倒見なくてもいいのに」
「私、お母さんになった気分だよ」
「まあ、可哀想な生い立ちではあるんだけどね」
パパは幼い頃に育児放棄されてしまった。独りぼっちで施設に連れて行かれたが、幼なじみのママとはその後もよく会っていたそうだ。
めんどくさい人だけど、なぜか憎めない。仕方ないなって許してしまう愛嬌がパパにはある。それはずっと一緒に過ごしてる私もおばあちゃんも思うところ。パパの長所というかもう天性のものかもしれない。お仕事にもきっちり活かされているみたいだし。
「何かほっとけなくて、つい面倒見ちゃうのよねえ」
「でも、今日だって大事な話があるって言うから、早く帰ってきたのに」
「紗良がいなくなって十年でしょ。彼なりに考えたみたいよ」
「何か知ってるの」
「前に相談されたことがあるの。詳しいことは知らないけどね」
おばあちゃんはふふっと笑ったけど、私は納得いかないまま夕食を終えた。手渡されたプレゼントを開けるとシックな半袖のブラウスだった。私のお小遣いじゃ絶対買えないお洒落な服だ。
「素敵! ありがとう」
「絶対、奈那に似合うと思ったの。ね、着てみて」
私はその場で服を脱いでブラウスを羽織った。アイボリーで余計なフリルや飾りもついてなくて、どんなボトムにも合いそうだ。瞬くんから貰ったピアスも着けると耳元で小さな誕生石が揺れて、鏡の中の自分がレディに見える。おばあちゃんが目を細めた。
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