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「やっぱり似合うわ」
「今度のデートはこれにする! おばあちゃん、ありがとう」
不意におばあちゃんが涙ぐんだ。
「…どうしたの」
「あー、ごめんね。何だか紗良を思い出しちゃった」
写真のママは何枚も残ってるけど、私よりずっと美人だ。パパはだんだん似てきたって言ってくれるのも、親バカだと思っていた。ハンカチで涙を拭くと、おばあちゃんは笑顔を見せた。
「やっぱり大きくなって似てきたわ。仕草とか笑顔なんてそっくりよ」
鼻をすすりながらまた目元にハンカチを当てる。急に恥ずかしくなってきた。
「そんなに?」
「伊智人くんもあの子を思い出してるのかもね」
それは、悲しいことではないのだろうか。
失った大切な人の面影を私に見るのは、つらくなったりしないのかな。これまで考えもしなかったことが頭をよぎった。
「私は奈那の成長が見れて、紗良にも会えたみたいで嬉しいわよ。泣けちゃうけど」
「ホント?」
「あの子が出来なかったこと、奈那が継いでくれてるみたいで」
パパもそうだといいな。
私を見てつらくなるなんて、私もやりきれない。
せがまれて一緒に写真を撮ると、おばあちゃんは帰り支度を始めた。早起きのおじいちゃんのために、朝ごはんの用意をしなきゃならないからだ。
「朝までいてあげたいけど、私も歳だからもうオールはキツいの」
「ううん。来てくれて嬉しかった。ありがとう」
「お互い言いたいこと言って、話し合ってみて。喧嘩になったら、今度は奈那がうちへいらっしゃい。おじいちゃんも喜ぶし」
「うん。どっちにしても近いうちに行くね」
おばあちゃんが帰って部屋が静かになると、また寂しくなってくる。瞬くんに電話しようと思ったけど、時間を考えてやめた。日曜日にはまた会えるんだし。
おばあちゃんのこと、パパのこと、ママのこと。
ぼんやり考えながらお風呂に入った。体が温まったのとおばあちゃんのおかげで、優しい気持ちが戻ってきた。
パパはいつ帰ってくるんだろう
今日は待っててあげようか
そう思ったけど、ドラマの録画を再生しながら私はいつの間にか眠ってしまった。
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