第一章・一幕

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3  特待生として入学した俺には、様々な特権がある。  本来寮は二人一組で3LDKの部屋を使うことになっているが、特待生は一人だ。  内装は事前に配られた資料に書いてある。  玄関、洗面所、浴室、トイレ、収納×3、洋室約八畳+バルコニー、洋室約八畳+バルコニー、和室6.5畳、ダイニング、キッチン、リビング。  そして和室には押し入れもあるらしい。  雪人が居なかったら、寂しい生活を送ることになっていたかもしれない。 「雪人、起きられる・・・?」 「・・・・・・・ぅ・・・・・ん・・・・・・」 「ダメそうだね・・・・・・」  目的地に着いたは良いものの、雪人が寝てしまった。寮を見上げて、大きなため息をつく。  目の前にある寮は、タワーマンションだった。  資料には15階層と書かれているが、一般的なマンションと比べて大きさが桁違いだ。  このマンションよりも、学校の校舎の方が大きいのだから先が思いやられる。  自動ドアを通って、受付で鍵を受け取る。  ちなみに受付の方は人型のロボットだったらしく、女性の姿をしていた。  男子校なのに、どうして女性が居るんだろうと疑問に思ったが、ロボットなら納得だ。  AIが搭載されているようで、普通に世間話やら会話をしてしまった。 「本当にここが寮なのか・・・?」    エントランスを見渡して、思わず目を見開いた。  ドリンクや食事が入った自動販売機が設置されており、ソファーや机なども完備されている。  空調設備が整っているのか、暑くも寒くもない心地よい空間が広がっていた。 「見ない顔だな。外部生か?」 「この顔、まさか卯川財閥の魁星様か!?」 「子供が居る・・・弟・・・・・・?」  ソファーで休息を取っていると、三人グループの人達が近づいてきた。  雪人を起こさないよう、声を潜めて挨拶する。 「今年からこの学園に入学することになった、卯川魁星です。よろしくお願いします」 「あ、ああ・・・よろしくな・・・・・・・。俺達は今年で三学年になる。まあ、気軽に絡んでくれ」  俺に合わせて、声を潜めてくださった。  可愛いと、先輩方が雪人を囲う。 「卯川家は一人息子だと聞いていたが、弟が居たんだな・・・・・・」 「この子は俺の息子です」 「「息子・・・!?」」  先輩方が目を見開く。  ちょっと言い方が悪かったかもしれない。  慌てて訂正を入れる。 「――ということがあったんです」 「う、うぅ・・・お前、イイ奴だなぁ・・・っ・・・・・・・」 「苦労したんだね・・・困ったことがあったら、俺たちを頼って良いからね?」 「魁星様・・・オレァあんたの味方だからなっ!」 「あ、ありがとうございます・・・・・・」  大柄な男三人に泣かれると、ちょっと怖い。  最初は不良に絡まれたかと思ってビックリしたけど、優しい先輩達で良かった。 「先輩、よろしければ連絡先交換しませんか? まだこの学園に来たばかりで、友達もいなくて・・・」 「ああっ、良いとも良いとも。連絡先でも個人情報でもなんでもくれてやらァ!」 「俺もオールオッケー、むしろ嬉しい」 「ちょ、俺を仲間外れにすんな。可愛い後輩が出来たからって、ズリぃぞ!」  先輩方と番号を交換して、その場で別れる。  学園に来て早々、三人も友達が出来た。  エレベーターに乗って、13階のボタンを押す。  13階より上は専用の鍵を差し込んで、ボタンを押さなければ行けないらしい。  学校の役員や、なにかのランキング?に元ずいて部屋を割り当てられるのだと先輩達が話していた。  あと、この学園では男同士の恋愛が当たり前で、性暴力が横行しているとか・・・・・・。  晃さんが日本刀を預けた理由がよく分かった。  ちなみに我が家では『触れぬは罪、祟りあり』という言葉が家訓になっている。  触らぬ神に祟りなしという言葉があるが、不条理は常に理不尽に降り掛かってくるものだ。  だからこそ、危険を避けて見て見ぬふりをするのではなく、先に芽を摘んでおくべきなのだとおじい様が言っていた。  もしも襲われるようなことがあれば、刀を抜くことも辞さないつもりだ。  エレベーターを降りて、自分の部屋の番号AC-101号室を探す。  俺の部屋は、エレベーターのすぐ近くにあった。 「今日からここで暮らすのか・・・・・・」  玄関にはケースが置いてあった。  棚やベッドなどは最初から設置してあると聞いていたので、荷物は最小限に抑えた。  洋室のひとつを雪人の部屋にするつもりだったが、ここ二日一緒に過ごして分かったことがある。  雪人は、一人で寝ると夜泣きするのだ。  俺が使う予定の部屋のベッドに雪人を寝かせて、明日の準備を進める。    小学校と高校の入学式がたまたま同じだったので、俺は雪人の入学式を優先することにした。  入学式で保護者は何をすれば良いんだ?  スマホで調べて、スーツとネクタイを用意する。  帰ってきたらすぐに着替えないといけないから、制服も玄関に置いておこう。  明日の準備をしている間に、夜になっていた。  目を覚ました雪人がお腹を空いたと言うので、エントランスの自販機で食べ物を買う。  確か寮にはコンビニがあると書いてあったから、明日は食材を買って料理をしないとな。  毎日ファストフードはさすがに良くない。
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