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 そろそろ買い物の時間だ。今日はカレーの予定だ。レトルトカレーを買ってこよう。もう何週間も外食をしていない。東京にいる頃はよくしていたのに。あの頃が懐かしいよ。 「さてと、スーパーに行くか」  秀雄は車に乗り、スーパーに向かった。だが、びくびくしている。またからかわれないか心配だ。  秀雄は小中学校の頃にいじめられていた過去があった。高校を出たら東京に行き、そこで暮らしていたのは、いじめから逃避するためだった。だが、また帰ってきてしまった。もうあいつらに会いたくないのに。 「あの頃が懐かしいよ・・・」  秀雄はスーパーにやって来た。スーパーの駐車場には多くの車が停まっている。そこそこ多くの人が利用しているようだ。  秀雄はスーパーに入り、レトルトカレーを取ってきた。いつものボンカレーだ。レトルトカレーはあんまり食べず、外食だった。また外食でカレーが食べたいな。  突然、勝ったレトルトカレーを何者かに取られた。秀雄は振り向いた。そこには秀雄をいじめていた山本だ。ここでまたもや会うとは。 「あれっ・・・。おい! そのレトルトカレー、返せ!」 「俺が買ったものだ!」  明らかに秀雄が買ったレトルトカレーなのに、自分の物と言い張る。人間は何度でも嘘をつけるものだ。俺にはわかる。こいつは嘘をついている。 「違うだろう。お前が取ったんだろう」 「違うぜー」  だが、山本は自分が買ったレトルトカレーを言い張っている。本当は秀雄が買った物なのに。秀雄は拳を握り締めた。 「返せ!」  山本は逃げた。秀雄は追いかけたが、追いつけない。秀雄は足が遅く、かけっこでは常にビリだった。それもいじめの原因だった。 「お客様、走らないでください!」  店員は注意した。だが、2人は止まらない。  秀雄は山本に体当たりをした。山本は床に倒れた。それを見ていた店員は、秀雄の元に駆け寄った。 「こいつ、俺が買った商品を取ったんだ!」 「そんなの知らん!」  だが、店員は秀雄の言っている事を完全に無視している。こいつも山本の仲間だろうか? 秀雄は店員も信じられなくなった。  と、そこに店長がやって来て、秀雄にげんこつを食らわした。こいつも俺の敵だろうか? 秀雄はスーパー全体が俺の敵だと思い始めてきた。 「痛てっ・・・」  秀雄はうずくまったが、みんな無視している。秀雄が悪いと思っているようだ。それを見て、秀雄は思った。俺はこの村全体でいじめられている。もう頑張っていく価値はないんだ。 「お前、何をしたんだ!」 「ごめんなさい・・・」  結局、秀雄は謝ってしまった。本当は俺が悪いんじゃないのに。どうして俺が謝らなければならないんだろう。みんなが嫌っているからこうなるんだろう。生きていく価値がないから、こんな事になるんだろう。  スーパーからの帰りで、秀雄は落ち込んでいた。結局、またいじめられてしまった。いつになったら幸せになれるんだろう。明るい未来が全く思い浮かばない。 「チクショー!」  秀雄は家に帰ってきた。だが、誰もやってこない。あまりにも寂しい日々だ。どうすれば寂しくなくなるんだろう。  その夜、秀雄は夜空を見ていた。夜は暗い。東京とはまるで別世界だ。東京はとても明るかったのに、ここはとても明かりが少ない。 「はぁ・・・。いっつもこんな日々だ。東京に帰りたいよ・・・」  秀雄は東京での日々を思い出した。だが、そんな日々はもう戻ってこない。母の寝たきりで、突然終わってしまった。あまりにも残念すぎる。 「みんな、元気にしてるかな?」  秀雄はスマホを開いた。スマホには東京での友達の投稿がある。もう何か月も会っていない。会いたいのに。  次に秀雄は小説投稿サイトを見た。自分の投稿は突然止まっていた。完結まで至らなかったものもある。実家に帰ったために、止まってしまった。 「ここで止まってしまった・・・」  秀雄は無念でしょうがない。期待していた人々に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。完結が見たいと思っていたのに、こんな事になってしまうとは。 「また書きたいよ・・・」  次第に、秀雄は思った。こんな人生、楽しくないな、昔に戻れたらいいな。だけど、それはかなわない。 「こんな人生、つまらないよ・・・」  ふと、秀雄は思った。死んで、もう一度人生をやり直そう。残念だけど、それしかないだろう。 「もう死のうかな?」  秀雄は遺書を書き始めた。その間、秀雄は泣いている。 「お母ちゃん、ごめん・・・」  そして秀雄が考えたのが、どうして俺は生まれてきたんだろうという思いだ。 「どうして俺、生まれてしまったんだろう・・・」  秀雄は涙が止まらない。母との別れが寂しい。だが、それも乗り越えなければならない。 「つらすぎるよ・・・」  ふと思った。天国でも小説を投稿したいな。きっとみんな、喜んでくれるだろうな。 「天国では、思いっきり小説を投稿したいな・・・。だってこれが幸せなんだもん」  秀雄は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。もっと東京にいたかったのに、もっと投稿したかったのに、あまりにも残念過ぎる。 「本当に申し訳ない・・・」  と、秀雄は冷蔵庫から缶ビールを取り出した。これが生前で最後に飲むお酒だろう。初めて飲んだのと一緒、一番搾り。忘れられない味になるだろう。 「もうこれが生きているうちに過ごす最後の夜なのか・・・」 「これが最後に飲む酒か・・・」  秀雄は一番搾りを飲んだ。とてもおいしい。いつも以上においしいのは、どうしてだろう。やはり、最後の夜に飲むからだろうか? 「おいしい・・・」  秀雄は思った。東京にいる頃はよく外食はしたし、コンビニで買う物もあった。 「最後に居酒屋に行ったの、いつだろう・・・」  秀雄は思った。もう行けなくなってしまった。もっと東京に住み、生きたいのに。 「また行きたいよ・・・。飲みたいよ・・・」  だが、居酒屋にはもう行けない。ここの住人だからだ。 「どんなに愚痴を言っても、もうあの頃は戻ってこないんだな」  それでも、東京に帰れない。その声は、誰にも届かない。 「できればあのままでいたかったのに。どうしてこんな運命になったんだろう」  秀雄は缶ビール500ml缶を飲み干した。だが、飲み足らない。 「飲んでも飲んでも忘れられないよ・・・」  秀雄は2杯を飲んだ。これで最後の晩餐は終わりだ。 「飲み終わった・・・。もう俺は終わりだ・・・」  遺書を書き終わった秀雄は、川べりに向かった。ここが俺の死に場所だと思うと、残念でたまらない。 「さて、川に行こう・・・」  秀雄は川べりに向かった。本当はもっといたいのに。  秀雄は橋の上の歩道橋から川を見ている。川は穏やかに流れている。だが、秀雄の経歴からそうでなくなってくる。 「さよなら・・・」  秀雄は川に向かって身を投げた。
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