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 退院して以来、初めて買い物に行く事にした。もちろんあの女と一緒だ。一緒に買い物をすれば、怖くないだろう。そして、寂しくないだろう。 「買い物、行ってくるね」 「行ってらっしゃい」  敏子に報告して、2人は買い物に出かけた。敏子はほっとした表情だ。誰かと一緒にいる秀雄を見て、秀雄は孤独じゃないんだと思った。これからもっといい関係を築いて、結婚まで至ればいいな。  2人は車に乗った。車を運転するのは、秀雄だ。秀雄は仕事でトラックを運転していたためか、運転には自信があった。女もそれをわかっているようだ。  2人はスーパーにやって来た。秀雄はスーパーを見て思った。久しぶりにやって来た。あの時と全く変わっていない。だが、不安もある。あいつがまた来るるかもしれない。またからかってくるかもしれない。だが、女がそれをカバーしてくれるだろう。 「さて、今日はこれを買ってくるんだな」  秀雄は敏子からもらったメモを取り出した。今日はカレーライスだ。玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジン、牛こま切れ、カレールーが書かれている。 「秀雄、こないだはごめんね」  秀雄は振り向いた。そこには山本がいる。だが、山本は優しそうな表情だ。どうやら、先日の事を反省しているようだ。 「いいんだよ。これからそんな事をしなければいいんだよ」  だが、秀雄は許した。秀雄は決して人を裏切らない、見捨てない。誰にでも友好的に接する。 「ありがとう」  山本は車に乗って、家に向かった。秀雄はその車の後姿を見ていた。横にいる女はその様子をじっと見ている。この人が秀雄をいじめていた人か。すっかり反省したんだな。これからいい関係を築いていってほしいな。  買い物を済ませた2人は、車に乗った。2人は嬉しそうな表情だ。徐々に一緒にいられる事に喜びを感じていた。秀雄は感じていた。この人となら、結婚してもいいな。そして、好きな事をより一層楽しめそうな感じがしてきた。  2人は家に帰ってきた。2人はとても嬉しそうだ。今日はカレーだからだ。 「ただいまー」 「おかえりー」  小さい声でではあるが、敏子の声が聞こえた。だが、秀雄は違和感を感じない。いつもこんな風に聞こえるからだ。  秀雄は敏子の部屋にやって来た。敏子はいつものようにベッドに横になっている。だが、表情は元気だ。 「買ってきたのね。ありがとう」 「いじめていた子、謝ってきた」  それを聞いて、敏子はほっとした。ずっとずっと気にかけていたけど、ようやく仲直りしたのか。自殺未遂をしたと知って、よほど言われたんだろうな。もうやらないと思ったんだろうな。 「そう。相当あの事でショックを受けたみたいね。私が注意したし」 「そうなんだ」  やはり女が注意をしたようだ。この女、とても頼りになるな。この人と一緒なら、もっといい事が起きそうだな。 「久々の更新、楽しみだなー」  女は楽しみにしていた。秀雄の書く小説がまた更新される事を。そして、また完結に近づく事を。 「えっ!? 僕の小説、知ってるの?」 「うん」  秀雄は驚いた。更新が再開したのを知っていたとは。楽しみにしているのなら、もっと頑張らないとな。 「そうなんだ」  秀雄は2階に向かった。女は1階に残り、晩ごはんの準備を始めた。  秀雄はパソコンを起動して、執筆をしていた。退院して以降、執筆を再開した。そのペースは徐々ではあるが、以前のペースを戻しつつある。そして、もっといけるんじゃないかと思い始めている。これもあの女がいる事に影響しているのでは?  秀雄は順調に執筆をしていき、いい具合まで進んだ。秀雄はため息をついた。今日もなかなか頑張れている。今夜はもっと頑張ろう。 「さて・・・」 「どう? 頑張ってる?」  秀雄は横を向いた。そこには女がいる。女はエプロンを付けている。 「うん」  秀雄は笑みを浮かべている。君のおかげで、何もかも救われた。そして、頑張ろうという勇気が湧いてきた。 「頑張ってね」 「わかった」  女は秀雄の部屋を後にして、1階のダイニングに向かった。秀雄はその後ろ姿をじっと見ている。  それから数日後、今日は金曜日だ。だが、そんな感覚はない。農作業を毎日している秀雄は全く感じていない。 「今日も疲れたなー」  パソコンと向かい合っていた秀雄は、背伸びをした。今日もなかなか進める事ができた。今日はここまでにして、明日また頑張ろう。  と、そこに女がやって来た。どうしたんだろう。 「ねぇ、今日、居酒屋に行かない?」 「い、いいけど・・・」  秀雄は少し戸惑ったが、すぐに笑みを浮かべた。久々に居酒屋に行けるからだ。実家に戻ってきて以降、居酒屋に行った事が全くなかった。 「ありがとう!」  2人は、敏子の部屋にやって来た。家を留守にする時は、必ず報告しないと。 「今日、居酒屋に行ってくるの?」 「うん」  敏子はテレビを見ている。居酒屋に全く興味がないようだ。 「楽しんできなさい」 「はい」  2人は鍵を閉めて、居酒屋に向かった。敏子は窓から、2人の後姿を見ている。この2人は、いつになったら結婚するんだろう。だが感じている。その日は近いと。
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