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 秀雄は居酒屋にやって来た。週末だからだろうか、居酒屋はいつも以上に賑わっていた。今週の労をねぎらうためだろう。秀雄もそんな気持ちだ。今週はよく頑張った。来週も頑張れるようにここで飲もうと思っている。 「行くの、久しぶりだな。東京にいた頃は週末によく行ってたけど、また行けると思わなかったよ」  2人は喜んでいる。ここに来てから、全く居酒屋で飲んだ事がないからだ。それに、誰かと飲むのは、お互いに初めてだ。どうなるのか楽しみだな。 「そうなんだ」  と、店員が生中をもってやって来た。2人が注文したもののようだ。 「お待たせしました、生中です」 「ありがとうございます」  店員がテーブルに生中を置くと、2人は写真を撮った。これをXに送ろうとしているようだ。だが、お互いの事は全く知らない。 「それじゃあ、カンパーイ!」 「カンパーイ!」  2人は中ジョッキを合わせて、乾杯をした。そして、ビールを飲んだ。 「うまい!」  秀雄は笑みを浮かべた。久々に飲むビールはやはりうまい。居酒屋で飲む時はたいてい、ビールからだ。 「久しぶりのお酒、うまいでしょ?」 「うん」  2人とも、また飲めて嬉しいようだ。女にもその気持ちはわかる。 「小説、頑張ってる?」 「うん。頑張ってるよ」  女はほっとした。また頑張ってほしいと思って、ここにやって来たのだ。こうして頑張っている姿を見ていたら、自分がやって来た甲斐があったと思う。そう思うと、もっと頑張らないとと思う気持ちになる。 「よかったよかった。小説を書いてる秀雄さんが好きだから」 「そう」  執筆をしている秀雄が好きとは。やっぱり僕はみんなから愛されているんだな、愛されている人のためにも、執筆を頑張らないとと思ってしまう。 「うん。ありがとう。また頑張るよ」 「ねぎまでございます」  と、店員が注文していたねぎまの塩を持ってきた。ねぎまの塩は秀雄が一番好きな焼き鳥のネタだ。久々に言ったのだから、好きなネタは食べなければと思った。 「おっ、きたきた! いただきまーす!」  秀雄はねぎまをほおばった。やっぱりおいしい。そしてビールが進む。 「おいしい!」 「よかったね」  女は嬉しそうな秀雄の姿を嬉しそうに見ている。笑顔が見れて、とても幸せだと思っているようだ。 「うん。でも、どうして来たの?」 「自殺未遂をしたと聞いて」  やはりそうだったのか。俺はとんでもない事をしてしまったな。でも、もう一度チャンスをもらったんだ。女のためにも、これからの人生をもっと頑張らないと。そして、何より執筆、更新を頑張らないと。 「そうなんだ。あの時はごめんね」 「いいのよ。これから頑張ればいいのだから」  女は秀雄の肩を叩いた。とても温もりを感じた。母ではないのに、どうしてだろう。全くわからない。 「ありがとう」 「とりあえず、これからの人生、頑張ってね」  女はこれからの人生を応援してくれている。女のためにも、これからの人生を頑張らないと。 「うん。また執筆できて、更新できて、本当に嬉しいよ」 「そう。あなたの嬉しそうな表情が好き」 「ありがとう」  女は注文した生中を飲み干した。今度は何を飲もうかなと思った。ここは新潟だ。新潟は酒造りの盛んな所だ。ここの地酒でも飲もうかな? 「あっ、切らしちゃった。今度は新潟の地酒でも飲むか」 「いいね」  ちょうどその時、秀雄も生中を切らした。2人とも、新潟の地酒を注文しよう。せっかく新潟にいるんだから。  翌朝、秀雄はいつものように目を覚ました。昨日はかなり飲んで、泥酔だった。こんなに飲むのは久しぶりで、いつも以上に飲んでしまった。歯を磨いてからは、ベッドにうつぶせになったまま、眠ってしまった。起きると、毛布を掛けてもらっていた。おそらく、女が毛布を掛けたと思われる。  秀雄は向かいの部屋で寝ている女を見に行った。女は寝ていた。夜遅くまでスマホを見ていたようで、スマホが横にある。 「おはよう、って寝てんのか?」  秀雄はスマホが明るいのが気になった。今さっきまで使っていたようだ。 「ん? これは?」  秀雄はスマホの画面が気になった。よく見ると、Xだ。アミというユーザーのプロフィールのページが表示されている。 「まさか、この人」  秀雄はそのアカウントに見覚えがあった。自分の小説が特に好きな人だ。そして、この人もネット小説家だ。まさか、ここに来たのは、アミさんだろうか? 「どうしたの?」  アミが起きた。アミは眠たい目をこすっている。まだ眠いようだ。 「おはよう、君って、僕の小説が好きな、アミさん?」 「うん」  アミは笑みを浮かべた。やはりそのようだ。まさか、ここで会えるとは。ここまで自分を気にかけてくれるとは。本当に嬉しいな。 「今までわからなかったでしょ?」 「うん」  秀雄は嬉しくなった。今まで更新できなくて申し訳ない気持ちと、自殺しようと思って申し訳ない気持ちでいっぱいだ。だが、それ以上に自分の小説をここまで愛してくれるアミへのありがとうの気持ちでもいっぱいだ。 「これからも、いつまでも一緒にいよ?」 「うん。いいよ」  2人は2人で歩んでいく事を決めた。そして、私たちの人生の次のページが始まった。これからの人生、いろんな困難があるかもしれないけど、2人なら、必ず乗り越えられる。だって、お互い愛しているのだから。
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