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江戸城では桜が吉宗に呼び出されていた。
無断で吉原に出向いたのがすでに判明していたのだ。
大岡越前を含めた南町奉行所を動かしたのだから、当然と言えば当然であった。
無論、桜もバレる事は前提で動いたのだ。
まずは事件を解決してしまい、あとは言い訳して許してもらおうという調子のいい考えであった。
なんとか笑って誤魔化そうとする桜に吉宗は腕を組んで怒りの表情を崩さない。
さすがにまずいと悟り、「お義父様、すみませんでした」と桜は平伏して謝罪する。
「まったく、お前は徳川の姫としての役目を全うすると言っておきながら、その舌の根も乾かないうちにだな。。」
「あ、いえ。今回は本当に花香ちゃんが困っていたので、助けたい一心で。決して危険な事に首を突っ込んだわけではございません。この通り無事に戻りました」
「無事に戻ればいいと言うものではない。余に黙って行ったのが問題なのだ」
「でも、お義父様に言ったら言ったで反対されるでしょうし。。」
「内容にもよるわ。今回の件くらいならば如月と那月を付けて許可したものを」
「本当ですか? だったら言えば良かった。次はちゃんと報告しますので」
「次? また抜け出る事を考えているのか?」
「いえいえ、あくまでも仮の話ですよ。嫌ですわお義父様」
わざとらしく笑顔で手を振るしぐさをする桜に吉宗の怒りも萎んでしまった。
「はぐらかし方は上手くなったようだな」
その様子を近くで見ていた加納久通は苦笑する。
「上様も何だかんだ言って桜が無事戻って来たのを喜びになられているようだ」
元々、泉凪の道場に行ったり江戸城下に自由に行けるのは桜に与えられた特権であったのた。
街の様子や人々の暮らしを直に見て桜が感じた事や思った事を聞くのも政治のために重要だと吉宗は考えたからだ。
そして桜も吉宗の親心というものをわかっているつもりであった。
おちゃらけているのはこの通り大丈夫でしたから安心して下さいという心の現れで、内心は吉宗にあまり心配かけないようにしなくては。と思うのであった。
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