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その都市は、もともとこの国では規模や経済的な面において、№3の地位にあった。この国の中ではだいたい真ん中あたりに位置し、交通の便も良かった。
だが№3とは言え、№2の都市との差は大きく、いつも背伸びしているような所があった。中央よりでも西よりでもないその曖昧な文化を何とかして独自なものであると主張しようとしているところがあった。
東風はその都市のそういう部分が好きだった。そして十八の冬、その都市の大学を受験した。数ヶ月後、そして十年後の自分の運命など知らずに。
ある年、都市の周りに見えない壁ができ、その街にずっと住んでいた人間は閉じこめられた。
それからずっとこの街は閉じたままである。
理由はいろいろ言われている。
空間のエネルギーの配置のバランスが狂っただの、他次元とつながってしまっただの、当時のFM放送は延々そんな番組ばかり流していた。
その時、公共電波はFMしかなくなっていた。
ニュースも天気予報も、娯楽番組も教養番組も、この都市に二つあった民放FM局が慌ててその役を押しつけられた。
ケーブルTVはある程度普及していたとは言え、市内全世帯にあった訳ではない。
それまでラジオを聞かなかった人々も、物置の中を探してまで引っぱり出して耳を傾けた。誰もが不安になったのだ。
そしてそのFMから流れた情報、街に流れる噂、当時は市役所と呼ばれていたところから出た「公報」――― 根拠のない情報、根拠のある情報、ひとしきり出回った後に、一つの噂が流れた。
「眠り男」である。
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