脱輪

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 部屋に入って来る天然の風が気持ち良い。朝も昼も夜も夜中も網戸から偶に入って来るのを感じて…そう僕はエアコンをつけることがない。って言うか壊れたままにしている。新製品を買う積もりもない。だってエアコンがあると、どうしてもエアコンに依存してしまい、なくてはならない物になって電気代が嵩んでしょうがない。そんな理由で数年前からエアコンを使わなくなって遂には扇風機も冷風機も使わなくなった。  今や夏の主な必需品は団扇とタオル。あと偶の涼み代わりにシャワーとアイスブラックコーヒーとオンザロック。それでも元々汗っかきだから汗疹まるけ。何せ夜中でも部屋の中は30度もある。何年か前まではこうも暑くなかった。熱帯夜も熱帯夜。だけど、暑さに慣れたお陰で熱帯夜に感じない。夜風がひんやりして気持ち良い。広くて風通しが良く熱の籠もらない木造家屋だからというのもあるが、人間、習慣づければ我慢出来るものなんだよ。とは言え、ヒートアイランド現象に見舞われるコンクリートジャングルの都会ではエアコンは欠かせないだろうね。  でも僕は車に乗る時もエアコンをつけない。オープンにして風をもろに感じる。早朝だけだけど、いやあ、涼しくて超絶気持ち良い!嗚呼、現代日本で僕程、天然の風を有り難く感じて生きている人間は他にはいないだろうね。だからという訳じゃないが、エアコンに頼り切っている連中に天然の風を届けてやりたい。  そんなことを思うことからして僕は変わってるんだね。思えば、周囲と歯車が噛み合っていたのは子供の時だけだった。高校の頃から完全に脱輪した。僕は脱輪したまま生き続けるのだろう。それがこの頃、正しいことのように思えて来た。僕は今、吉田拓郎の「今日までそして明日から」をしみじみ口遊む。
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