0.再会

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ドカッバキッと骨が折れる音が響く。ああ、もちろん自分の骨の音じゃない。弱い奴らの断末魔を聞いていると少し気分がいい。 「ゆ、許してくれ。俺は指示されただけでっ」 この期に及んで命乞いしてくるとか、だっさ。 適当に蹴り上げて放置する。後始末は部下にお任せだ。 つまんないなーと思いながら周りを見渡すとふっとあたりが暗くなった。どうやら月が雲に隠されたようだ。 「お月様は喧嘩がお嫌いなのかねー」 呟いてみただけ。 何人かの足音が聞こえて、スーツ姿の男が何人か近づいてくる。 「若。申し訳ありません。一人取り逃がしました」 「あ?」 俺が一言発すると全員の表情が固まった。 「へー?お前らに任せたのに。残念。どこに行っちゃったのー?」 「白宮公園に逃げた模様です。人質を取り、若が来なければ殺すと。」 部下の言葉を聞くやいなや、俺は走り出した。 よりによってそこかよ。てかこの時間に公園にいるなんてどこのどいつだ?? あの公園だけは…ぜっってぇ許さねぇ…。 到着すると、おじさんが男に拳銃をつきつけていた。 わあ、馬鹿かよ。 「ねーねー、おっさん、なーにしてんの?カタギには関わらないって掟、知らねーの?」 「そ、そんなもんどうだっていい!お前は次期組長にふさわしくない!だから降りろ。そして桐生さんを…」 そこまで聞いたところで俺は一気におっさんとの間合いを詰める。まあ、こいつからしたら俺が急に消えたように見えただろうな。 「なっ⁉」 おっさんの顎を蹴り上げて、宙に舞い上がったチャカを回収して終了。つまんねえなー。 やっと追いついてきた部下たちがおっさんを拘束する。 俺は放心状態の人質のもとへ。巻き込んじまったカタギには謝らねえとな。 「おーい、大丈夫だった?ごめんねえ?怖かったよね。はいこれ。」 「あ、ありがとうございます」 「この時間はさ、物騒だからいちゃダメだよー、危ないからさ。てか何してたの?」 「あ、ちょっと昔のことを思い出してて」 「あー、思い出の場所?俺も俺も。ここ穢されたくないんだよね」 「はぁ。」 遠くから若―と呼ぶ声がする。どうやら回収が済んだらしい。 「じゃ、気を付けて帰りなよ。バイバーイ」 「あ、あのこれ、」 「いいよいいよ、それあげる。もう一着同じの持ってるからさ。」 迎えの車に乗って帰宅すると、ずらりと男たちが整列している。 「お疲れ様です!若!」 「おーおー、みんなお疲れぇ。」 これが彼の日常。 楪組組長の息子、楪悠矢。齢16にして、若頭である。
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