アクシデント

2/3
前へ
/39ページ
次へ
「いやー焦った焦った。千歳君が転んだ時にはどうしようかと思ったけど、2人ともアドリブ、最高だった!もう、本当に愛し合ってる者同士にしか見えなかったよ!!」 「ええ、本当に。最高だった!もう一回見たいもん。」 「私、最高のセリフを書いたつもりだったけど、まだまだね…」 終演後、明人は俺を見ようとしない、というか自分の世界に入り込んでしまっているようだ。ここは俺が話してつないでおくしかないか。俺はクラスメートと話すの得意じゃないんだけどな。 「ごめんな、鈴木、楪。うまくフォローしてくれて助かった。メガネ、壊れちゃったけど大丈夫?」 「あー、うん。それ、伊達メガネだし」 「あ、そうなの?」 「あー。子供のころにメガネに憧れてさ、その時から癖でつけてただけだから」 「そっか。なら良かった…おい、鈴木、大丈夫か?」 「悠真が生きてた。ほらやっぱり死んでなんていなかったんだ。悠真悠真悠真…」 「おい、鈴木?」 やばい。このままだと明人が壊れる。 「あー、明人、大丈夫か?ちょっと保健室行こうか」 「悠真悠真悠真悠真…」 重症だな。ここまで拗らせていたとは。もう忘れてると思ってたのに。てか、忘れてくれよ。死んだ奴のことなんて。 「あー、俺ちょっと明人保健室に連れて行くから。後よろしく」 「お、おお…閉会式も厳しそうだな…」 「賞取れたらあとでお菓子山分けしようねー!」 クラスメートの言葉を背に受けつつ保健室へと向かう。 「ほら、いくぞ」 すると、ぐいっと腕をひかれ、保健室と反対方向に向かいだした。 「おい、どこ行くんだ明人。保健室反対…」 「……」 何も言わずについてこいという無言の圧を感じる。腕が痛い。 「ちょっ…」 ガラガラとドアを開けて、資料室に放り込まれた。 ガチャン、と扉の鍵を閉める音が聞こえた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加