アクシデント

3/3
前へ
/39ページ
次へ
「ちょ、明人どうしたんだよ⁉」 急に首をつかまれ、壁に押し付けられた。フードを脱がされ、急にため息をついたと思ったら今度は両手を縛られた。誰だ、ウルの衣装に本物のネクタイ採用した奴。 「ちょ、ほんとになんだよ!」 「悠真、なんだろ?」 冷汗が流れる。心臓がうるさい。 でも。これは知られてはいけないことなんだ。心臓の音なんて気にしない。 「は?何言ってんだよ。俺は悠矢だ。悠真って誰?」 「ほくろがある」 「え、何?」 「首の後ろのところにほくろがある。小さいし、自分からは見えないから気づかないよね。小さい頃さ、悠真に服着せてやってた時に見つけたんだ。僕だけが知ってる、悠真なんだぁ」 まずいぞ。ばれかけてる。 「いやいや、ほくろがひとつあったところで、だから何って思うけど。その悠真って人とおんなじ場所にほくろがあるだけだろ。とにかく、話しづらいからこれ解いてくれ」 「逃げない…?」 「逃げねえよ。ちゃんと話したいだけだ」 「じゃあ、僕の過去の話、聞いてくれる?」 明人の過去の話…こいつ、どこまで知っていってる?いや、何も知らないはずだし。今のところ俺が悠真かもしれないということしかわかっていないはずだ。とにかくただ頭がバグっちゃっている状態なわけだから、まず落ち着かせるか。 「ああ。聞く。聞くから拘束はすんな」 「わかった。ごめん」 シュル、と腕の拘束が外れた。 「おい、ここも」 まだ首が解放されていない。 不安なのか…? さっきの劇での最後のセリフを思い出した。あの時、きっと明人は赤ずきんとしてじゃなく、悠真に対して言ったんだ。 「じゃあ、手、握ってていいから。離さなくていいから」 ぱっと拘束が外れて、直後に強く腕をつかまれた。 痛ぇけど、これぐらいは我慢してやる。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加