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「そうか。そんなことがあったんだな」
「うん。あの後すぐに両親は一時帰国してさ。事情を聴いて僕をイギリスに連れていったんだ。それと、悠真が死んだってことも警察から聞いてさ」
「そう、」
「でも悠真は死んでなんかいないんだ。だって待っててって言ってたから。僕をずっと待たせたままなんだ。悠真は、絶対生きてる。隣町で、悠真と同じくらいの体格の男の子が川で溺れて死んでたみたいなんだけど…それは悠真じゃない」
「でも、足枷がついてたんだろ」
「首がなかったらしいんだ、その死体」
「……」
「だから、弟と断定はできないって言いたいのか?」
「両親は、遺伝子検査の結果も出てあれが悠真だって思い込んでる。もう悠真は亡くなったって。どうして我が子の死を簡単に受け入れられるのかって思ったよ。同時に両親のことが心の底から嫌いになったし、恨んでる」
言いたいことが、わかる。わかってしまう。
「あの時父さんがイギリスに転勤になんてならなければ、母さんが一緒にいてくれれば、もしくは僕らを一緒にイギリスに連れて行ってくれてればって・・・・・恨んでる。当時イギリスでテロ事件があって、それで不安だったからって説明を受けたんだ、かなり大きくなってから。でもそんなん理由にならないよね。僕の悠真を失うことになるぐらいだったらイギリスで一緒に死ねたらよかったのに」
「あ、きと…」
そんななるまで…でも俺の正体を明かすわけにはいかない。
あの日、俺は『悠真』を捨てたんだ。
「そっか。で、俺の顔がそんなに悠真に似てたんだ?」
「うん、てか目が、本人」
「そっか。ほら、世の中に同じ人は3人いるっていうし、それなんじゃね?」
「ごめん、少し落ち着いたわ」
「そっか」
「じゃあ、」
腕を離そうとすると、また力を込められた。
「な、に」
「あの、2人の時だけでも悠真って呼んでもいいかな」
それは…
「ダメだ。俺は悠真じゃない」
少し胸が痛んだ。
どうにかしてこいつを悠真の亡霊から救ってやりたいな…って俺がいえたことじゃないか。
「ははっ、そうだよね。悠矢は悠真じゃない…あれ、なんで、ごめっ」
明人にとっては、11年の思いが溢れたところだもんな。
「はぁ。しゃあねえな。泣き止むまで一緒にいてやるから。好きなだけ泣きやがれ」
「うん…うぐっ。ありがとう…悠矢ぁ」
ごめんな。
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