打ち上げ

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今俺達は、衝撃的な現場を目撃している。 クラスメートの蓮山怜と、隣のクラスの神宮路 明日夏(じんぐうじ あすか)の、キスシーンである。 「へへ、明日夏ぁ♡」 いつも冷静な蓮山君が、神宮路君にべったりである。 遡ること数十分前ーーー 「おい、蓮山?大丈夫か?」 「蓮山くん、ウーロンハイ一気飲みしちゃったから…」 ウーロンハイときがつかずに2杯も一気に飲んでしまった彼は、当然、酔ってしまった。 それも、絡み酒タイプ。 「楪ー、お前ちょーかっこよかったぜ!俺もほんとは赤ずきん役やりたかったんだぜ…でも相手が…」 「おい、蓮山、お前がやりたくないって言ったんだろ?」 「だって、だってぇ、相手役が鈴木なんだもーん」 と叫んで今度は泣き出してしまった。 みんな、どうする?どうする?と、焦り始めた。クールキャラな蓮山が子供みたいに泣きじゃくっていて物珍しそうに見ているクラスメートもいる。 俺は、明人から離れられないしなあ…なぜか明人が俺の腕をとんでもねぇ力で(ほんとにとんでもねぇ)強く握ってるからなぁ…。多分だけど夢ん中で悠真に会ってんだろうなぁ。 すると、見覚えのある顔ぶれがぞろぞろと入ってきた。 そうか。隣のクラスも打ち上げか。 「あれ?怜?」 そのうちの1人、神宮路君が、蓮山君を見つけて声をかけてきた。 「あー!神宮路君って蓮山と同室だよな!?お前ら寮だったよな!?」 「え、うん。どうしたの、コレ」 「私達はウーロン茶を頼んだんだけど、手違いでウーロンハイが来ちゃったみたいで。それで蓮山くん飲んじゃって…」 「ちょっとこいつ引き取ってくれよー。代金は後でいいからさ」 神宮路君は、自分のクラスの人と少し話してからまたこっちに来た。 「ごめんねー、引き取ってくね。これ、打ち上げ代。後で怜から徴収するから」 「ごめんね、神宮路君も打ち上げあったのに」 「いいよいいよ、ほら、怜、帰るよ」 なんとかなりそうだと思ったその時。 蓮山君が神宮路君の腕をぐいっと引っ張り、神宮路君を席に座らせ、自分は神宮路君の膝に乗っかったのだ。そして、神宮路君の身体に腕を巻きつけた。 全員、一言も発さずにこの一連の流れを見ていた。 「れ、怜!?何してんだ、帰るぞ」 「んー?なんでぇ?」 なんとなく、蓮山君の声が甘いような…? 「ここはまだ焼肉屋だよ?とにかくっ、ほら立って!」 神宮路君が立とうとするのを、嫌だ嫌だと立たせない蓮山くん。さながら幼稚園児と先生である。 「だって明日夏不足なんだもん。お互い準備期間会えなかったし。」 「それは仕方ないだろ?ほら、帰るよ」 「お前がこのクラスじゃないのが悪い!お前がウルをやるなら、俺だって赤ずきんやったのに!!」 …ん?今なんて? 「ちょ、おま、何言って、」 「んー?あれぇ、明日夏が2人いるぅー」 「酔ってんだよ…どうしよ」 「明日夏!」 「ん?んん゙ーっ!!」 神宮路君が蓮山君の方に顔を向けた瞬間、蓮山くんが神宮路君の頭に腕を回してキスしたのだ。 「ぷはっ…何してんだ!もう帰るからな!みなさん、すいませんでした!」 そう言って、神宮路君は蓮山君を抱っこしたまま帰っていったのだった…。 気がつくと、明人が起きていた。 「お、明人起きたか?」 「ん…いいなぁ…」 「どした?よく聞こえなかっ…んぐっ…!?…」 耳を近づけようとしたところ、明人が自分の唇を俺のに押し付けてきた。 「おい、明人…って、寝てるし」 はぁ…と、ため息を付くと、クラスメートの視線がこちらに集まっていることに気が付いた。 「あ、いや、これは違くて!」 急いで誤解だと弁明するも虚しく… 「あー、そういうことですかぁ」 「なるほどなるほど。そりゃあ、名前呼び許してくれないわけだ」 「今日はカップル祭だねぇ」 「じゃ、鈴木のことは楪に任せるわ」 と、誤解されたままお開きになってしまった。 なんでキスしたんだ…明人…。 意味わかんねぇよ。兄弟なんだぞ。いや、もう兄弟じゃねえけど。
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