休日

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夕方になってようやく、悠矢は帰ってきた。 スーツ姿の悠矢…かっこいい。 思わず見惚れてしまった。それに、金髪に戻ってる…!! 「なんだよ?変か?」 「いや、かっこいいなって思って…」 「は⁉変なこと言うんじゃねえよ」 「いや、本当に似合ってるし…僕が女の子だったら絶対惚れてると思う」 「だから馬鹿なこと言ってんじゃねえ!ほら、飯食い行くぞ」 結局、僕はずっと組長とお話していて料理していない…一日お世話になってその上ご飯までごちそうになってしまっていいのだろうか…。お昼は組長が、 「大人数やとゆっくり話ができへんやろ」 と、言ったので(おそらく組長の部屋で)2人で食べたのだ。 なので、今目の前に広がっている光景に驚いている。 たくさんの男たちが2列に並び、頭を垂れている。 「若!お疲れ様です!」 奥の方まで進むとようやく悠矢は座った。ここが若頭の席なのだろう。 「明人は俺の横な、ここ」 と、悠矢の隣の席を指さした。僕がここに座っていいんだろうか…。 悠矢が着席すると同時に、空気がずしん、と重く変わった。 「頭!!お疲れ様です!!」 悠矢の着席と同時に組長が到着したみたい。 「お疲れ様ぁ。明人君、さっきはどうも。楽しかったわぁ」 この重苦しい空気感とは反対に、悠矢のお父さん、組長は柔らかい。 その中に威厳が垣間見える。さっきまで話していて少し距離が近い普通のお父さんだと思っていたけど、やっぱりヤクザの組長なんだなぁ、と実感させられた。 悠矢からもどこか似たような威厳を感じる。やっぱり親子なのだと思った。 先程の悠矢のお父さんとの会話を思い出した。 「あの、失礼かもしれないんですが、ひとつ質問してもいいですか。」 「ええでぇ。俺が答えられることやったらなんでも答えるで。なんやろなんやろ」 意を決して質問することにした。もし悠矢の親御さんに会うことがあったら、これだけは聞いておこうって決めてたんだ。怯むな、鈴木明人! 「悠矢って、その、養子とかですか?」 「ああ、悠矢と俺が似てないから?よく言われるわソレ。やけどな、悠矢は俺の子やで。大事な、俺の息子や」  「そう、ですか」 すっと僕の目を視ながら答えてくれた。ただ見られているだけなのに、心臓を掴まれているような心地がした。 「大体、俺の子でもなけりゃ組を任せられるかってな、わははは」 「そうですよね」 「やからさ、高校にいる時だけでも仲良うしてやってな。あいつ、普通の学生なんて経験したことないんよ。でも俺も親やからさ、少しはアオハルっちゅうもんを楽しんでほしいわけや」 「え、高校だけって…」 「明人君と悠矢の住んでる世界は違うっちゅうことや。高校卒業したら、悠矢のことは忘れてやって」 「そ、れは…」 嫌ですって言いたかった。でも、言えなかった。僕を護ろうとしてくれているとわかったから。でも、忘れたくないよ。 「せめて高校在籍中だけでもな、ほんまよろしゅう」 にっと笑った組長は、悠矢の、1人のお父さんの顔をしていた。
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