ハロウィンがやってくるようです

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ハロウィンがやってくるようです

「お前ら、準備は良いかー!」 「千歳、お前元気だな」 あのカップル騒動も落ち着いてきたころ、千歳が何やら叫びだした。俺はというと、文化祭以降、顔もばれてしまったことなので開き直って金髪のままメガネもかけずに登校している。ピアスと墨だけは隠したままだが。 あの後、明人と千歳と俺の3人でいることが増え、たまに神宮路と蓮山が絡んでくる。2人は神宮路のクラスにも受け入れられたようで昼休みはどちらかの教室で過ごしていることが多い。 今日もこの5人で昼食を食べているところだ。 「だって、お前ら、もうすぐハロウィンだぜ?仮装、何にするか決めたか?」 「千歳落ち着け、その前に期末だ」 「それを言うなぁぁ」 明人が冷静にツッコみ、千歳が崩れ落ちた。 「まぁ、怜はスポーツ推薦だし、赤点回避してれば大丈夫だよね?」 「でもダセェじゃん?明日夏は頭良いのにさ。彼氏の俺がこんなんじゃ…」 「明人は教える側だな」 「いやいや、悠矢の方が頭いいじゃん。僕実年齢では年上のはずなんだけどなぁ…」 「黙れ!学年5位6位7位!俺の仲間は蓮山だけだぁ…」 またも千歳が崩れ落ちた。 「いや、てかお前前回何点だったんだよ?俺、赤点は1つもなかったぜ」 「…全部です…」 「は?え、全部赤点だったとか言わないよな…?」 「そのまさかなんだよ、楪ー!お前が1番頭いい!俺に勉強教えてくれ。どうやったらそんなに頭良くなれるんだよおお」 仕事が忙しくて勉強する暇がなかった為、学校にいる間に全部吸収するようになった…とは言いづらいな。でも授業聞いてたらわかる…。 「でもさー、授業聞いてたらわかるよね?」 神宮路の言葉にうんうんと頷く俺と明人、そして意味わかんねぇ、とでも言いたげな蓮山と千歳に反応が二分した。 自分がこんな風に高校生活を送る日が来るなんて想像もしていなかった。 「ふっ…。」 思わず笑ってしまった。嬉しいんだな、俺。 「あー!楪が笑ったぁ!ひどーい!」 「千歳を笑ったんじゃねぇよ」 「嘘だー!こっち向いてたもん。」 まぁまぁ、と明人が宥める。固定化しつつあるな、この構図。 ブブッとスマホが揺れた。 「明人、今日早く帰るわ」 「あぁ、わかった」 明人は俺の仕事も理解した上で一緒にいてくれる。他の3人には、言いたくない。言ったらきっと、この日常は崩れてしまう。 くそーー こんな感情に振り回されたくないから目立たないようにしてたはずなのに…この空間が、こいつらといるここ(居場所)が心地良いせいだ。 絶対に、守る。
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