アナザー赤ずきん

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放課後。僕は蓮山君に話しかけた。 「蓮山君はさ、この役やるの抵抗ある?」 「え…うーん…この役自体には抵抗はないし面白い話だと思うよ。でも、それを演じたいかっていうとそれは違くてさ」 「あー、なるほどねえ。名指しで言われるのちょっとつらいよな」 「うん。鈴木は?」 「うーん、僕はみんなが推薦してくれるなら頑張ろうかなって。演劇はあっちの授業であったし、こういう題材もよく扱ったからさ。こういう言い方あれだけど、割り切って演じるのは得意だからさ。」 「そうか…俺は…。」 蓮山君の目が、嫌だと告げていた。 「まだキャスト決まったわけではないしさ、ちゃんと自分はやりたくないって意思表示すればみんなわかってくれるって」 「そうか?」 「うん。きっと。」 蓮山君の眼には赤ずきんを演じる事に対し、深く嫌悪している理由が他にあるんじゃないか、と直感的に思った。 「(れい)ー部活行こうぜ」 「明日夏(あすか)。ごめんね、待たせちゃって。それじゃ、鈴木、またな」 「おう」 彼はサッカー部らしい。この学校は部活が強制ではないので僕は帰宅部で良いかと思っている。 ふと気になって自分の後ろの席に目を向ける。 いつも気が付いた時には帰ってしまっている。まだこの時間には帰宅部勢もまだまだ残っているというのに、またいない。まだおはようすら交わしたことがない。 明日は、おはようと言ってみよう。
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