人になれない僕たちは

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人間をやめたのはいつのことだったかな。もうずいぶんと昔のことで忘れてしまった。 今の僕の名前は、影山 れおん(かげやま れおん)。まあ、名前というものに特段価値も意味もないが。日本で暮らす高校2年生だ。 「影山、お前さ、俺たちのことなめてんの?」 「俺たちさー、のどかわいちゃったからさー、飲み物買ってこいや」 そして絶賛不良たちに絡まれている最中である。 はぁ、めんどくさいな。僕はなぜかこういう輩に絡まれやすい。そういう体質なのだろうか。 こういう時はだまって従った方が良い。ガキの戯言だしな。すぐ飽きるだろう。それぞれの飲み物のリクエストを聞いて自販機の方へと足を向けた瞬間、ぶわっと風が吹いた。 「何してんの?君たち?そんなことしてだっさ。」 中性的な声が裏庭に響いた。「だっさ」という単語が美しく聞こえたのは生まれて初めてだった。 「な、なんだよお前。お前も俺らのパシリになってくれんの?」 「wwww」 「wwww」 次の瞬間、1人が吹っ飛んだ。 何が起こったのかわからなかったが、どうやら後から来た彼がチンピラ共のリーダーをのした様子。リーダーがやられ、勝てないと踏んだのか3人全員、そそくさと退散していった。 「君、大丈夫だった?」 彼が振り返り、視線が合う。チリ、と心の中で何かが疼いた。彼は紫と水色の瞳を持っていて、それがどうしようもないくらい美しかった。 「あー、うん。助かった。ありがとう」 「あー、この眼気になる?」 「いや、綺麗だなって思って…」 「そう?綺麗って言われたの初めてだな。いつも怖がられるか気味悪がられるだけなのに」 「見る目ない人達なんだなぁ…」 「ははっ。お前変わってんな。俺はこんな眼、大嫌いだ」 「僕は、その眼気に入ったよ」 「はっ。お前、名前は?」 「影山」 「名前はっつてんの」 「ああ、れおん」 「え?マジ?俺、獅温(しおん)。似てんな。」 「だね。」
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