人になれない僕たちは

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そう。僕は死ぬことができない。が、毎日死んでいる。 訳が分からないって?そうだよね。 「信じられないと思うけど、一旦僕の話を聞いてくれる?」 「おう。」 「獅温、君はさっき僕のことを、みんなのことを殺したと言っていたね。つまり、君には即死術かそれに近いモノがあるんだね。」 「よくわかるな。この短時間で。この眼の紫が即死術、水色が蘇生術を使える。」 「蘇生までのタイムリミットは?」 「24時間。」 「じゃあ、話してても大丈夫そうだ。話を戻すね。どうして僕が生きているのか、死なないのかなんだけど。僕は無限に命を持っているんだ。」 「無限に命を…?」 「そう。僕は怪物なんだ。1日に一度自害しなければ生きながらえない。しかし一回自殺すれば何万年も生きられる」 「は?どういうこと?」 これを僕の能力だというのなら、おそらく獅温の能力の反対だろう。自身に対してのみ即死術、超速蘇生術といったところか。物心ついた時には俺は日に一度自傷する時間を作ることが日課になっていた。両親の顔も知らず、スラムで生きていた僕は毎日犯罪まがいのことをするようになった。そうしないと生きていけないから。「生」に執着して、縋り付いて生きていたから。それと同時に「死」に対する渇望も高まっていった。「死」を意識するたび「生」との距離は縮まっていく。だから、はじめはナイフだった。身体のどこかをナイフで傷つける。それだけで僕の「生」は満たされた。あと一回、あと一回だけ…ってのが毎日続いたんだ。異常者だろ。
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