人になれない僕たちは

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「痛くなかったのか?」 「痛かったよ。痛いことが大切なんだ。痛みを感じなくなったら人間でなくなってしまう。そうだろ?」 「……ああ。そうだな。」 そして僕はある時思ったんだ。毎日どくどくうるさいコレを傷つけたらどうなるんだろうって。 ああ、勿論、死んだよ。すごく痛くて、熱くて、苦しくて、あの時すごく僕は生きてた。 「それで?」 「それで、ああ、死ぬんだって生まれて初めて強く感じてね、幸せだった…。なのに、次に目が覚めたらもう僕は人間じゃなくなっていた。」 「蘇生の能力ってことか。」 「そう。しかも日に一度自害しなければ、ひどい心臓発作が起きて強制的に絶命させられ、強制的にまた蘇生される」 「つらいな」 「もう忘れたよ、そんな感情」 「……俺だけが人と違う力で苦しんでるんだと思ってた」 「僕も。君にも何かあるんだろうなと思ってたけど、僕と似ていたとはね。でも君の場合は外部にしか作用しない、そうだろ?」 「うん。れおんのは逆に自分にしか作用しないんだろ」 「そうだよ。ずっと死にたいんだ。何百年も生きて、もう死にたい」 「でも死ねないんだもんな」 「ああ。毎日この一回で死にますようにって願いながら心臓にナイフを突き立ててる」 「俺、今嬉しい。不謹慎かもしれないけど、自分と似た境遇の人間がいてくれてこれ以上ないほど嬉しいんだ。」 「そうか……とりあえず、こいつら警察に引き渡してさっさとみんなを蘇生させるか」 「ははっ。だね」 獅温は生まれて初めて、心の底から笑った。
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