人になれない僕たちは

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その”実験”は高校を卒業してからも続いた。 毒、ナイフ、糸、絞殺、溺死、感電死、大量出血死etc... だがやっぱり死ねなかった。僕がずっと17歳の見た目なのに獅温はどんどん大人になっていく。 「なぁ。俺思ったんだけど。」 それは突然のことだった。 「お前に俺が蘇生術かけたらどうなんのかな」 「え?何にもならねえんじゃ…?」 「いやね、仮説なんだけど、俺の能力って物事の正負を入れ替える能力だなって思ったわけよ。生きている人間を死へ、死んでいる人間を生へってね。」 「ほーほー。それで?」 「お前の能力はいわば停止能力。お前の進むはずの時間(とき)を停止させている。」 「あー、言われてみれば性質が違うのな」 「そ。で、自殺がトリガーとなって自分の時のまき戻しが起こるなら、その反対をしてやればいいのではって」 「なるほど…。生き続ける、ひとつの時間にとどまり続けている奴の人生の歯車を外部から進めるっつーことか」 「そ。マイナスにマイナスをかけるとプラスになんじゃん?だからお前に蘇生術かければワンチャンいけねえかなーって」 獅温はたまに突拍子もないことを言う。だが獅温が言うとなぜかは知らないけれど「うん、そうだね。やってみよっか」って言いたくなる。
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