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【生きてるー?】
【おかげさまで】
一応喰羅のおかげでちょっと元気になった為、千里眼を使ってスマホは見つけた。そろそろ充電器を買わないと電池がやばめだ。山姥がドラマを見ているのなら電気をひいたということだ。使わせてもらうなら肩揉みをしなければいけないが。
【山姥に”個人情報をネットに載せるんじゃない! そんなんだから住所特定されるんだよ!”って怒られた】
【山姥の方がネットリテラシー高いじゃん】
【さすが有料コンテンツまで使ってドラマ見てるだけある】
痛くて引きこもっていたのではなく、イケメンが出るドラマにハマっていたらしい。
【そういやちゃんとした質問してなかったね。あー、そうだな。怖いものってあるの?】
【ないなあ】
「マジか」
タブレットを見ながらぽつりとつぶやく家鳴。実は同じ山に住んでいたりする。ただしやまびこは「姿が見えない」と信じられているので、会う事はできないが。それが少し寂しくもある。
今や妖怪や怪異がネットをたしなむのは当たり前となりつつある。その方が自分たちの伝説をまき散らしやすく、一度でも話題にしてもらえれば助かるからだ。
やまびこのスレタイを見て飛びついてみれば「サイコパスに道案内してるじゃねえか!」と慌てて書き込みをした。
山姥は毎日ダラダラとドラマをみている印象しかないので、ちょっと面倒くさい田舎のばあちゃんという認識だ。家鳴は家にとりつくので山姥の家にこっそり居座っているのである。
そうこうしているうちに山姥が帰って来た、鼻歌交じりだ。喰羅は悲鳴をあげているが。
【そういえば、喰羅ってどうなるんだろうな。性根を叩き直してもらうとかかな? 弟子入りさせられたりして】
そう家鳴が書きこむとナイナイ、と即返事が来た。
【山姥なんて悪食の代名詞だぞ。食うに決まってるじゃん】
「え?」
ちらりと見れば、ウッキウキで包丁を研ぎ始めている。
「待って、俺次の家見つけないとここ出られないんだけど!」
以前山に住んでいた老人が亡くなって辿り着いたのが山姥の家だった。この半世紀平和そのものというかヒマすぎたのだが。そういえば山姥だった、と今更思い出す。そして始まってしまう山姥クッキング。
いきなり途絶えたやり取りにやまびこは不思議に思いながらもそうだ、と思いついた。
【そういやあった、こわいもの】
【山姥だろ。俺も今怖くなった】
【今? いや違うって。情報化社会が一番怖いよな】
【嘘だろどうなってんだよお前の頭の中!】
この後「山生まれの妖怪ってちょっと普通の妖怪と違うよなと感じたことあるやつ集合」というスレッドがあがって大盛り上がりとなった。
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