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他の質問者が増えることなく、くーちゃんとのやり取りは続いた。一切質問してこないのでちょっと寂しい気もするが、くーちゃんとの掛け合いが何だか楽しくなって来る。
【アタシくーちゃん。腹ペコで死にそう】
【飴かチョコないの? スポドリとか。糖分補給大事だよ】
【アタシくーちゃん。ちょっと好き嫌い多くて食べられない】
【マジで。何食べるの】
【ご馳走】
「くーちゃんグルメさんか。もしかしてインスタ映えしないものは食べたくないのかな」
やっほー、という声が聞こえる。これはもうやまびことしては条件反射である。寝ていても飛び起きるくらいだ。
「やっほー、やっほー、ほー、ほ……」
まさかやまびこが自分で輪唱しているとは思うまい、とセルフツッコミをしつつ。これがやまびこの体、いや、魂に刻まれた条件反射というやつである。山に向かって叫ばれれば返さざるを得ない。それが例えベンバ語であったとしても。
「やーっほ~」
やっほー、やっほー、ほー、ほ……
「今日は多いな。夏休みまだだと思うけど」
言いながらも口元に笑みが浮かぶ。本当に久しぶりだ、やまびことしてちゃんと仕事をするのは。
日本の妖怪は「人々が信じている」ことが力の源となる。強く信仰されれば強くなり、忘れられてしまえば消えてしまう。やまびこはかろうじて生き延びている状態だった。
「最近透けてたからなあ」
影が消え始めた時は焦った。本当はスマホを使って怖い話とかでバズらせ、人を呼ぼうかと思っていたのだが。ついつい9チャンネル掲示板が面白くて真似したくなってしまったのだ。
それが今やまびことしての使命を果たしたことで、ちゃんと姿がくっきりした。ガリガリで骨と皮状態だったがちょっと肉が増えた気がする。
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