山女

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 無事就職が決まり、忙しい毎日を過ごしていたある日。ニュースを見ているとピコ、とアプリの通知が鳴った。 『元気か?』 「!?」  相手は新井だ。信じられない思いで連絡を見つめる。助かった? 慌てて通話ボタンを押すと「よう」と普通に話してくる。 「新井! 無事だっ――」 『会いたい』 「もちろん! 今どこだ!?」  テレビの音がうるさいので消そうとした。 「お伝えしていますように、本日✕✕山にて遺体が見つかりました。損傷が激しく身元の確認を急ぐとともに、事件事故と熊の被害を視野に捜査を開始します」  そのニュースを、信じられない思いで見つめる。どういうことだ、と思うと同時にガタガタと震える。熊のはずない、それをやったのは……。  電話の奥から聞こえるのは「かーっ、かーっ」という音。カタカタとスマホを持つ手が震える。 『早く来てくれよ』  本当に新井なのか、こいつは。 『来てくれないなら、俺が行くよ。だって俺は、自由に動けるから』  山女が生きているのか? それとも新井が山女になったのか? そんなことどうでもいい。早く逃げ――。  ピンポーン、とインターホンが鳴る。 『今度は一人だけで逃げないよな?』  ドアの向こうと、スマホから同じ声が聞こえた。
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