灰空の下で

1/1
前へ
/1ページ
次へ

灰空の下で

熱線が降り注ぐ灰色の空の下、主人公のリュウは銃を構え、全身に汗をにじませながら前線を走っていた。周囲の建物は崩壊し、焦げた瓦礫が道を埋め尽くしている。放射能に汚染された風が顔を打ち、呼吸をするたびに喉が焼けるような痛みが走る。リュウは核戦争の真っただ中にいた。 「前進!敵はもうすぐだ!」と隊長の声が響き渡る。リュウは仲間たちと共に一歩一歩、慎重に進んでいく。しかし、次の瞬間、轟音とともに爆発が起こり、リュウの視界は真っ白に染まった。耳鳴りが激しく、周囲の音が何も聞こえない。爆風に吹き飛ばされ、リュウの身体は地面に叩きつけられた。 意識が朦朧とする中で、リュウは過去の記憶を辿り始めた。まるで走馬灯のように、少年の日々が鮮明に蘇る。幼い頃、リュウはヒーローに憧れていた。人々を助けるために戦う正義の味方に。あの頃の夢は、今の現実とはかけ離れていたが、彼の心の中ではずっと輝いていた。 「リュウ、早く起きなさい!」母の声が耳元で響く。少年リュウはベッドから飛び起き、学校へ急ぐ。彼の頭の中には、いつもヒーローになる夢がいっぱいだった。学校の友達と一緒に、ヒーローごっこをして遊ぶのが何よりの楽しみだった。 しかし、現実の戦場に戻ると、リュウは酸欠状態に陥り、呼吸が苦しくなってきた。周囲の空気は重く、肺が爆発しそうなほど痛む。彼は必死に身体を動かそうとするが、力が入らない。視界がぼやけ、意識が遠のいていく。 「ここで終わりか…」リュウは思った。だが、その時、彼の胸のポケットにある小さな爆弾の存在に気づいた。これは、仲間たちと共に敵の基地を破壊するために持たされていた最後の手段だった。リュウは震える手でポケットに手を伸ばし、爆弾を取り出した。 「これで、みんなを助けることができるかもしれない…」リュウは決意を固めた。彼は自分がヒーローになれないことを知っていたが、少なくとも、仲間たちのために最後の力を振り絞ることができる。その思いだけが彼を支えていた。 最後の力を振り絞り、リュウは爆弾のスイッチを押した。閃光とともに、彼の意識は完全に途絶えた。核戦争の中で失われた命は数知れないが、リュウの犠牲は仲間たちに希望をもたらす一筋の光となった。 そして、遠い未来、戦争が終わり、平和が訪れた世界で、リュウの名前は英雄として語り継がれた。彼の夢は、人々の心の中で生き続け、次の世代へと受け継がれていったのだった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加