§2.近い存在に

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「でもこれ、危ないですよね。お客様も足を引っかけそうです」 「ああ……たしかに」 「いっそ、展示台の上に乗せたほうがいいかもしれません。吉井店長に話してみます」  展示台の上にはゴルフ用品が置かれているのだが、高さのない台だからマネキンを乗せても問題なさそうだ。というより、逆に目立っていいかもしれない。  いいことを思いついたとばかりにウキウキと話す私を見て、社長は微笑みながら真剣に耳を傾けていた。 「そうだ、君の連絡先を聞いてなかったな」  社長が胸ポケットからスマホを出すのを見て、私もあわてて自分のスマホでメッセージアプリのIDを表示させた。 「じいさんが暴走してなにか言ってきたら、いつでも俺に連絡して」  再びドキンと心臓が跳ねる。  近づきすぎてはいけない人だと頭の中で警鐘が鳴る中、憧れてやまない存在の社長と連絡先を交換できて舞い上がる自分がいた。
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