§1.意外な縁

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「おじいちゃんは?」  リビングのほうに目をやってキョロキョロと見回したけれど、祖父の姿が見当たらない。  父が病気で亡くなったのは私が十三歳のときで、それ以降は私と母と母方の祖父の三人で暮らしている。なので我が家では祖父が父親代わりだ。 「囲碁を打ちに行ったわ」 「そう」  昔から祖父は囲碁打ちが好きで、碁会所には同世代の仲間がたくさんいるらしく、とても楽しそうに交流している。  年齢を重ねても熱中できることがあるというのは素晴らしいし、うらやましい。  キッチンで立ったままお茶を飲みつつ母と話していたら、部屋着のポケットに入れていたスマホが着信を告げた。  誰からなのかと画面を見ると、かけてきたのは祖父だったので、私は通話ボタンを押して「もしもし」と電話に出た。 『冴実、今家にいるか?』 「いるよ。どうしたの?」 『うっかり傘を忘れて出たんだ。悪いけど持ってきてくれないか?』  私はフッとあきれた笑い声を漏らしつつ、「わかった」と短く返事をして電話を切った。  祖父が通っている碁会所までは何度か訪れたことがあるし、家から歩いて行ける距離なので、私としても外に出る良いきっかけができた。
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