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「なんでその男じゃダメなんだい?」
「ダメではないけど、雲の上の存在で手を伸ばしても届かない人なの。それに、今は恋愛より仕事で頭がいっぱい」
「うちの孫も同じようなことを言っとるわ」
私の発言を聞き、辰巳さんが肩を落として苦笑いをした。
辰巳さんのお孫さんの話は今までに詳しく聞いたことはなかった。たしか一緒に暮らしてはいなくて、私より六歳ほど年上で男性だったはずだけれど、それくらいしか知らない。
「お孫さんはどんなお仕事をされてるの?」
碁盤を睨んだままの祖父をそっちのけにして辰巳さんと話していると、祖父が突然私に視線を向けた。
「たっちゃんの孫は会社の社長だ。すごいだろ」
なぜか祖父が自分のことのように自慢げに言うと、辰巳さんは笑いながら謙遜をして顔の前で手を横に振った。
「うちの孫は趣味が高じて会社を作っただけだ。まぁ……信頼できる仲間と一緒にやれてるから幸せだろうけどな」
「すごいです。信念と覚悟がなきゃ会社なんて作れないもの」
自ら起業するには多大なエネルギーが必要だと思う。
もし最初に資金の借り入れをするのなら、事業を成功させなければ借金だけが残ってしまうのだから。
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