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「ほんっとうに、申し訳ございません」
顔を真っ赤にして頭を下げる多江。腕には美央をしっかりと抱いていた。
一時はどうなるか、と焦った彩は苦笑いを浮かべるよりほかがない。
警備員に囲まれたところがインフォメーションの直ぐ近くだった。囲まれた彩はオタオタしていたけど、母親を見つけた美央は一目散に多江に向かって駆けだした。
「ママ!」
「美央。何処にいたのよ」
「あのお姉さんと一緒に、ママを探してた」
美央がすぐさま言ってくれたお陰で彩の容疑はすっかりなくなり、多江はひたすら頭を下げることになったのだ。
「いえ、私も動かないでいれば良かったかもですけど、館内放送を入れてもらわなきゃってそればかり思って。それに直ぐにインフォメーションに来たかったんですけど……」
彩の釈明で、途中でトイレに立ち寄るはめになり、多江のほうが先に着いたことが知れた。警備員の人たちも「何もなかくて良かったです」と帰っていった。多江はますます深く頭を下げるのだった。
そんなに謝らなくても。今なら、自分のしたことが軽率だったと分かるのだ。連れて出てしまったのだから誤解されたのだ、と。親御さんに知らせてあげなきゃって必死だったけど、けっきょく美央ちゃんに助けられたような……ま、無事に送り届けられてよかった。
彩は母親に抱かれて笑っている美央にバイバイをしてショッピングモールを後にした。とんだ災難だったけど、美央の笑顔が見れて晴れ晴れとしていた。
家について、
「あーーーーーー!!」
声を上げる。友人のお祝い、ワゴンの服も買いたかったのに、すっかり忘れていたのだった。
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