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scene 20.
「あーもうヤだ!」
俺が机の前でノートに突っ伏して雄叫びをあげると、寮のルームメイトである碓氷が呆れたようにため息をついた。
「もう何回目だよ。グチってる暇あったら手ぇ動かせ、手を」
「だってよ〜」
中間テストで赤点を取ってしまった俺は、先生のお情けでレポート提出で単位をもらえることになったのだが。
「何書いていいか分かんないもんよ。そもそも分かったら赤点なんか取ってないってーの」
「道理だな」
うんうん、と納得したように顎に手をあてて頷く。いやいや、そうじゃなくて。
「碓氷くーん」
「……何」
「ヒント! なんかヒントくださいっ」
両手を胸の前で合わせてお願いポーズをすると、さっきより深〜いため息が聞こえてきた。
「……しょうがねえな」
ヒントだけだぞ、と言いながら、自分のノートを開いて俺の机に置いてくれる。
「ここ。あとここんとこまとめて書いてみたら」
とんとん、と綺麗な文字が並んだ紙面を軽く叩く。
「言っとくけど、丸写しすんなよ。ちゃんと自分の文章考えて書けよ」
「うん。サンキュ」
口は悪いけど。
碓氷はいつもお願いきいてくれるんだよな。
それは何故かなんて、馬鹿な俺はその時までちっとも考えたことなかった。
2024/09/15
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