夢ぎわロストバージン

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(てん)ちゃんは顔、可愛いんだからさ」 私の左側。空見先輩がバニラ色のビートルを運転している。 「その変な服やめれば、ちゃんとモテると思うよ」 県境の長いトンネルを抜けると、春。 「モテたくありません、別に」 ライナスみたいに、 ラッキーストライクを咥えて離さない先輩が、この古いドイツ車の中ではぜったいに煙草を吸わない。 「でも、セックスはしたい。と」 したいわけじゃない、別に。 空見先輩を選んだのは、理由はいろいろあるけど。 ひとつ。乗っている車が可愛い。 オモチャみたいな、作り物みたいな。 すべてが理想的で完璧。
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