夢ぎわロストバージン

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初めては外でシたい、と持ちかけたのは私。 長いトンネルを抜ければ、山はまだ、あくび混じりの緑。 ハニーブロンドのウイッグ。お気に入りのボンネット。 白レースのワンピースに、はちみつ色の籠バッグ。 ハンドルを回して窓を開けた。 見た目より冷たい風が前髪とボンネットを飛ばそうとする。 「天ちゃん、寒くないの?」 「寒いですけど」 自称春風に凍えながら、両目を凝らして。 生まれたての緑の奥に、終わりかけの色を探している。 おしゃべり。馬鹿騒ぎ。ひび割れ。 ファミレスのパフェ。剥がれかけのネイル。 持て余す。気まぐれ。欺瞞と傲慢。 イノセントな沈没。 バイバイと手を振って、歩き出して、 目の奥が、喘いで。 真夜中に、ふと。真夜中に。 ブンブンと8の字を描く、目の回るような孤独。 「見つけた、あそこ」 私の声を聞いて、空見先輩はブレーキを踏んだ。
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