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誰も通らない山道にビートルを停め、赤のタータンチェックのシートを引っ張り出す。
クロスベルトの厚底パンプスで、誰のものか知らない雑木林の奥へ、勇猛果敢に突撃。
「何でそんな靴履いてくるの」
丸めたシートを肩に担ぎ上げた先輩が、山道をずるずる滑る私にまともな指摘をする。
「靴、これしか持ってないんで」
「嘘でしょ。体育のときは」
「これで跳んだり走ったり」
「嘘でしょ」
「元陸上部ですよ?」
「それも嘘でしょ」
ケラケラと白い歯並びを覗かせて、空見先輩が笑う。
ヘビースモーカーの割に、意外にきれいな白い歯。
空見先輩を選んだ、その二。
舐めてばかりのリップ。安物のメッキのアクセ。
投げやりで、場違いで、役立たずの。
陶酔。全能感。破滅的で、刹那的な。
天啓。
「あ」
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