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明るい森の奥、崩れ落ちていく、春。
ちらちら、ちらちら。
色褪せた断片が。
「桜、残ってるじゃん。よかったね」
「理想的です」
「何が理想?」
「散り方が」
桜の木の根元に、ピクニックシートを広げた。
寝転がれば、空。
ごつごつ、背中が痛いけど。
すべてが理想的で完璧。
隣に座った先輩が、煙草を咥えて火をつける。
片方の手はペチコートの中、その指が内腿を滑る。
空見先輩は善人じゃない。偽善者でもない。
世の善悪にフラットで、法律に違反しない限り、好奇心と欲望に従う。
目の前に、入れそうな穴があれば、遠慮なく入る。
空見先輩を選んだ、その三。
「本気でするの?」
「やっぱ面倒ですか」
「そういう意味じゃないけど。ふつう〈初めて〉は特別なのかなって」
「空見先輩は、特別ですか」
「別に」
初めて、に価値を与えない相手。
空見先輩を選んだ、その四。
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