お見舞いにそっとこめて

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「え? 風邪?」  同じクラスで男バスの篠原くんから、辻が風邪ひいたと教えられた。 「珍しいよな。なんか熱が高いらしいよ。ほら、最近色んな感染症も流行ってるしさ、どっかで拾ったんじゃね?」  篠原くんと辻は結構仲がいいと思うんだけど、彼の口ぶりからは心配しているような様子は感じられなかった。 「しばらく休み、かな」 「どうだろうな? 東条がお見舞いに行けば、案外すぐに治ったりしてな」 「なにそれ」 「べっつにー。ま、そんなわけだから」  へらっと笑って篠原くんは友達が集まっている集団へと混ざっていった。  多分、一緒に朝練しているの知っているから教えてくれたんだろうけどさ。  お見舞いに行ったら治るってなによ。風邪がそんなことで治るわけないじゃない。  ……熱が高いって言ってたけど、どのくらいつらいんだろう。  でもそんな状態なのに、お見舞いなんて行ったって会えるわけないし。  そもそも辻の家なんてどこか知らないし。  そんなこと思いながらも、気になって授業なんかずっと上の空だった。
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