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何故か頬を赤らめる俺を見て不思議そうな表情を浮かべる遥。
(む、無理…遥の顔みると…、変なこと…考えちゃう…)
「何でそんなに俺と目、合わせてくんねえの」
遥が俺に言った。俺は当然今のままでは遥のことを見ることが出来ないから、今遥が俺を見て言っているのか、どこか違う方向を見て言っているのか分からない。
遥でえっちなことを考えていたという罪悪感が抜けず、遥を直視することが出来ない。
今も、遥の顔を見るだけで、えっちなことをしている姿が脳裏に浮かんでくる。
何故か茉白と朝日は二人でずっと話していてあちらは二人の世界に入り込んでいるし、俺は遥としか話せる状況じゃない。
好きな人が目の前にいるのに、話したいのに、目を合わせたいのに。
「…無理…」
「は?」
「俺もう無理…!!」
俺は空へ大きく打ち上がる火の華を一度も見上げることなく、屋台のあった明るい方へまるで遥から逃げるように走った。花火を見に向かう人達とは逆の方向に。
走っている時はただ、逃げることに夢中で何も考えられていなかった。
(無理…っ、二人きりなんて、無理だよ…!!)
そして後に、走り出してから自分のしたことの情けなさに気付いた。
(…はあ、走ってきちゃった、何逃げてきてんだ…俺…)
後悔と恥ずかしさ、色々な感情が俺の頭を廻る。
我に返ってからではもう遅くて、俺はさっき茉白と焼きそばを食べた屋台の方まで走ってきていた。
全力で走ってきたせいで息が荒い。
(…遥、本当にごめん。…俺いい加減俺ももうお前に恋するの、辞めるから…。同性の友達でエロいこと考えちゃう俺なんてもう終わりだし、今の出来事で完全に嫌われた…)
遥には申し訳ないことをしてしまった。この事はちゃんと深く謝罪しなければ。そして、俺ももうこの恋をもう終わりにしよう、と誓った。
(…勝手に終わらせとけ、って話だよな…)
俺は焼きそばの屋台のベンチへ腰掛けた。
そして、ここでズボンのポケットからLIMEの通知音が鳴った。
「伊吹急に走ってどうしたんだよ…!? 大丈夫か?」
LIMEは茉白からだった。
「ごめん、大丈夫。屋台に食べ物買いに行きたかったんだ」
俺は嘘をついた。今まで茉白にですら嘘をついたことがなかったのに。
「本当にそうなのか…?」
「うん。ありがとう。あと戻るよ」
親友にまで嘘をついてしまった。俺は本当に何をしているんだろう。頭でグルグル廻る様々な感情で押しつぶされそうだ。
(…早く戻らないと)
そう思えば思うほど何故か足が言うことを聞かない。俺は深いため息をついた。
自己嫌悪で涙が溢れそうになる。俺は一人ベンチで下を向くだけだった。
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